パナソニックの子会社株式売却がなぜ申告もれと指摘されたのか?

2018年09月12日

パナソニックが申告もれを指摘される



新聞各社の報道によると、 大手電機メーカーのパナソニックは、2018年9月11日に大阪国税局の税務調査で約421億円の申告漏れを指摘されたと発表しました。


(引用:パナソニックHP)


何が申告もれだったかというと、その株式の売却益です。

アメリカにある子会社の株式を、オランダの別の子会社に売却した際の売却金額が不当に安かったため、パナソニック本体の株式売却益が少なくなって法人税等の金額が少額となって、それが申告もれという大阪国税局の言い分です。




なぜ、子会社株式の売却金額が問題になるのか?



今回の株式売却金額がなぜ問題になるかは、売却の相手先が子会社である、ということです。

本来は、株式の売却代金は、売却側と購入側が同意すれば自由ですね。

全く資本関係などない会社間なら、そのようなことが言えます。

株式売却価格が高すぎても安すぎても、売り手・買い手のどちらが難色を示し、取引は成立しないはずです。

取引が成立したということは、適正な価格であるといえるのです。




しかし、子会社が相手であれば、話は別です。

はっきり言えば、いくらで売るかを操作できることになります。




パナソニックが利益をあまり出したくなければ、安く売ればいいことになりますし、利益を出したければ高く売ればいいのですから。

グループ会社間の取引ということで、大阪国税局が目をつけ、株式売却額が安いと指摘してきたのです。




国際間の取引だと、相手国の課税庁との争いの面も・・・



これが国際間取引になると、さらにやっかいです。

なぜなら、税金をどちらの国が取るのか、という国と国との間の問題も発生してくるからです。

売却側の国は、少しでも売却益を多くして税収を多く取りたいところですし、
購入側の国は、少しでも安く買って、将来の売却益を大きくし、将来多くの税収を得ようとするからです。



今回のパナソニックの株式売却では、売却側の日本の国税局は、税収を多くするために株式を高く売るべきだと考えかちで、それで安く売りすぎという指摘となりやすいのです。




中小企業でも、グループ間取引には注意が必要



このような問題は、パナソニックのような大企業に限って起こることではありません。

日本国内のグループ会社間の取引でも、国家間の争いはありませんが、同様の指摘を受けることがあります。




たとえば、製造業のグループ企業と、それを仕入れて売る販売業のグループ会社間の取引です。

また、卸売業のグループ会社と、それを仕入れる小売業のグループ会社間の取引です。

このグループ会社間の取引価格を操作することにより、各会社の利益の調整ができてしまうからです。

高くグループ会社に売れば、上記の例では、製造業や卸売業の会社の利益が大きくなり、
安く仕入れる側の販売業、小売業のグループ企業の利益が減少することになります。

反対に、安い価格でグループ会社に売れば、上記の例では、製造業や卸売業の会社の利益が小さくなり、
安い価格で仕入れる販売業、小売業のグループ企業の利益を大きくすることができてしまいます。




たとえば、製造業の原価が20という安値で販売業のグループ企業に100で売り、販売業の会社が取引先に120で売った場合、

製造業のグループ会社の粗利益は、80(100-20)で、販売業の会社の粗利益は、20(120-100)とできます。




今度は、製造業の原価が70という高値で販売業のグループ企業に100で売り、販売業の会社が取引先に120で売った場合、

製造業のグループ会社の粗利益は、30(100-70)で、販売業の会社の粗利益は、50(120-70)とできるのです。




「売り−仕入れ」の取引以外でも、

・お金を貸しているときの利息をいくらにするか
・共通費用の負担割合をどうするか

などといったグループ会社間(関連会社)取引でも、同様にその利率や負担割合が適正かが問題になります。




指摘を受けなくするにはどうすればいいのか?



このようなグループ間取引について指摘を受けないようにするには、その価格を"相場"ですればいいのです。

と、言うのは簡単ですが、多くの場合上場株式のような市場がある訳ではありませんので、相場がわからないという問題があります。

今回の指摘に対して、パナソニックは、売却価格は客観的な評価に基づく適正な時価であった、と不服申立をするそうです。

不服申立をするにも、売却価格が適正であったと主張する資料が必要になります。

第三者との価格を参考にする



一般的に、グループ間(関連会社間)取引について、税務上の問題を指摘されないようにするためには、同じ取引を第三者と行った場合の価格と同じにすることです。

ただし、実際には参考にはなりますが、それだけでは適正価格は決まりません。

多くの企業では、取引量などにより取引先をランク分けし、より取引量が多いお得意様には、より安い価格で取引することになるからです。

したがって、「これが完璧な適正な価格である」なんて主張するのは困難です。

それでも、もし、指摘された場合を想定して、
取引価格が適正価格であることを似たような取引量のある第三者との価格を根拠にしたり、
同業他社の取引実態を根拠にして、反論資料を準備しておくしかないでしょう。

どうしても指摘を受けたくない、という場合には、利益が多く出る側にとってやや高めの価格設定にする、という対策さえ必要となるかもしれません。


※当ブログの記事は、投稿日現在の税制などに基づいております。
その後改正があった場合には、ブログの記事が最新の税制に適合していない場合もございます。
ご了承ください。(税理士 米津晋次)

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