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2023年06月19日
不要土地の国庫帰属(引取り)制度がスタートしました
2023年06月19日
こんにちは。名古屋市緑区の税理士 米津晋次です。
相続税の申告をすると、この状態では、どうにも活用できない土地をよく目にします。
このような土地は、放置され、将来へ「負の資産」として引き継がれる可能性が高いです。
このたび、国ではこのような土地を少なくしようと、土地を国が引き取り制度をつくりました。
相続土地国庫帰属制度の概要
相続で取得した土地で不要なものを国が引き取る
相続で取得した土地が建物を建築できない敷地や郊外の利用価値の低い土地の場合、これまでは手放したいと思っても放置せざるを得ませんでした。
しかし、このような土地でも要件に合えば、国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」が、2022年(令和5年)4月27日から始まりました。
対象は過去の相続も含むすべての土地となっていることから、これまで管理が面倒だったり固定資産税負担を納めたくなかったりという理由で放置していた土地も登記せざるを得なくなるでしょう。
そうした売り手もつかないような実質「負の資産」オーナーの選択肢として、国が新たに用意したのが「国庫帰属制度」です。
土地の相続登記が2024年度から義務化に
2024年(令和6年)4月1日からは、土地の相続登記が義務化され、違反者には罰則があります。正当な理由なく登記を怠れば10万円以下の過料が科されることとなります。
この土地の相続登記の義務化もあり、使う当てがなく売り手もつかない土地の処分方法として、新制度の利用を検討するケースも増えそうです。
注意すべき点
ただ、利用価値の低い土地を引き取るだけあって、国が制度の利用に一定のハードルを課しているなど、注意すべき点は多いのが実情です。
例えば申請に当たっては、土地に建物がある、担保権や使用収益権が設定されている、他人の利用が予定されている、土壌汚染されている、境界が明らかでない、所有権の存否や範囲について争いがあるなどの事情がある場合には、却下事由に該当し、そもそも審査を受け付けてもらえません。
審査を受けられるとなれば、承認申請書、土地の位置および範囲を明らかにする図面、申請者の印鑑証明書などの必要書類を用意して法務局で手続きを行います。
1件当たりの審査手数料は1筆当たり14,000円です。
もし、仮に審査で不承認となり帰属制度が利用できなかったとしても、審査手数料は返還されません。
さらに審査では、国による管理にコストがかかり過ぎないかがチェックされます。
こうした条件をクリアして審査を通過すれば、晴れて不要な土地を国に引き渡すことができますが、その際には10年分の管理費に当たる負担金を納めなければなりません。
負担金額は原則20万円ですが、市街地や農用地区にある宅地、田畑、森林などは金額が上がり、面積によっては100万円を超える負担金が発生することもあります。
相続土地国庫帰属制度の利用要件
この「相続土地国庫帰属制度」の利用要件を確認しましょう。
国に帰属させる要件
相続土地国庫帰属制度は、相続又は遺贈で取得した土地について法務大臣の承認を得て負担金を納付することで利用できます。
制度が開始する令和5年4月27日以前に相続した土地も対象になります。
ただし、次のような利用制限のある土地は申請できません。
例えば、建物がある土地、抵当権や地上権、賃借権などが設定されている土地、通路など他人に使用されている土地、土壌汚染のある土地、隣地との境界が明らかでない土地などです。
これらの土地は制限を解消しないと申請できません。
また、一定の勾配や高さのある崖地、土砂災害のおそれのある土地、地上や地下に管理・処分を阻害する有体物がある土地、隣接地の所有者と争いがある土地などでは、申請しても承認を受けられない可能性が高いです。
土地の境界が明示されていること
相続土地国庫帰属制度の要件に該当するかは事前相談することができます。しかし、その前に、現地を見ておくことが必要です。申請の後、法務局の担当官が現地に赴き、境界がどこにあるかを確認します。長く放置された土地の場合、境界がすぐに判別できないこともあります。
審査にあたっては、申請する土地と隣接する土地との境界を明らかにする写真、土地の形状を明らかにする写真を用意しておくことが必要です。また、隣接地の所有者が認識している境界と相違がなく、争いがないことも要件になります。境界を確定させる場合には、土地家屋調査士など専門家に相談すると良いでしょう。
通路の用に供されていないこと
通路など他人の通行に使用されている土地は、相続土地国庫帰属制度の対象外となります。ただし、現在、通路や道路として使用されていなければ申請することができます。土地が実際にどのように利用されているかについても、事前に現地を確認しておきましょう。
相続土地国庫帰属制度の利用手続き
相続土地国庫帰属制度を利用するには、次の手順を踏みます。
事前相談
所有する土地を国が引き取ってくれるかについては、物件の所在する地域を管轄する法務局・地方法務局(本局)に事前相談をします。
遠隔地の土地の場合は、申請者の近くの法務局・地方法務局(本局)で相談することもできます。
相談は事前予約制で、1回30分以内、法務省サイトの「法務局手続案内予約サービス」から予約します。
土地の権利関係を示す登記事項証明書、土地の形状や境界がわかる図面、写真などを持参すると良いでしょう。
承認申請
土地の所有者が申請書を作成して申請します。
申請書の作成は、弁護士、司法書士、行政書士に代行してもらうことができます。
申請書類に必要な項目は、法務省サイトに掲載されたチェックリストが公開されています。
必須書類は次のとおりです。
(1)承認申請する土地の位置及び範囲を明らかにする図面
(2)承認申請する土地と隣接する土地との境界を明らかにする写真
(3)承認申請する土地の形状を明らかにする写真
(4)承認申請者の印鑑証明書(有効期限なし)
審査手数料は、1筆14,000円です。申請書類についても事前相談で確認を受けることができます。
書面調査と実地調査
申請の後、法務局担当官による書面調査と実地調査が行われます。
案内がなければ現地にたどり着けないような土地の場合、土地所有者に同行を求められることがあります。
審査期間は、概ね半年から1年程度とされています。
負担金の納付
国に引き取ってもらえる場合、国に納付する負担金は、土地の種目、面積、地域に応じ、10年分の土地管理費相当額と定められています。
宅地は原則20万円で、市街化区域や用途地域では面積に応じた金額となります。
負担金は、通知が届いてから30日以内に納付が必要です。
なお、国庫帰属による所有権移転登記は、国がやってくれます。
【参考】
→相続土地国庫帰属制度について(法務省)
【投稿者:税理士 米津晋次】
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