ミニコラム
◆扶養控除等(異動)申告書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、
①主たる給与から受けるもの
②他の所得者が受けるもの
③従たる給与から受けるもの
の欄から構成されています。
この申告書の提出は、年末調整事務においては必須の手続きで、一般的に、本年であれば、「平成22年分給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」と「平成23年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を主たる給与支払者に提出します。
この場合、保険料控除申告書は平成22年分であるのに対して扶養控除等(異動)申告書は平成23年分となっています。
ここでの注意ですが、平成23年分の扶養控除等(異動)申告書の様式が一部変更されている点です。
「B扶養控除欄」が「B控除対象扶養親族(16歳以上)(平8.1.1以前生)」と、また、従たる給与の欄は、新たに「住民税に関する事項」となっています。
そして、従たる給与については、別途、その申告書の様式が定められています。
◆従たる給与についての申告書の提出要件
従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書は、なんの制限もなく従たる勤務先に提出できるか、と言えばそうではありません。
この申告書は、当然ですが、2以上の給与の支払者から給与を受ける人で、主たる給与の支払者から支給されるその年中の給与の金額(給与所得控除後の給与等の金額)が次の①と②の金額の合計額に満たないと見込まれる場合に、従たる給与の支払者のもとで配偶者控除や扶養控除を受けるときに提出できるものです。
①主たる給与の支払者から支給される給与につき控除される社会保険料等の額
②その人の障害者控除額、寡婦(寡夫)控除額、勤労学生控除額、配偶者控除額、扶養控除額及び基礎控除額の合計額
◆扶養親族の異動は自由か
なお、“主たる給与”の支払者に申告をした控除対象配偶者及び扶養親族を年の中途で“従たる給与”の支払者に申告替えすることはできます。
しかし、“従たる給与”の支払者に申告した控除対象配偶者及び扶養親族を年の中途で“主たる給与”の支払者に申告替えすることはできません。
この少子高齢化の時代に、従たる給与から控除を受ける人はどれだけいるでしょうか、ましてや、来年から年少者の扶養親族が控除対象扶養親族から除外されることを併せ考えると皆無ではないでしょうか。
◆範囲内は非課税対象
毎日の通勤に電車やバスなどの公共機関はもちろん、マイカーや自転車を利用する方は多いでしょう。
役員や使用人の通勤にかかる費用は、通勤手当や通勤用定期乗車券として通常の給与所得に加算して支給されます。
これらは、「合理的な運賃等の額」の範囲内である限り本人に課税されないことになっています。1カ月あたりの非課税となる限度額を超えなければ源泉徴収の対象となりません。
この限度額はどのように定められているのでしょうか。
◆通勤に電車やバスなどの交通機関だけを利用している場合
この場合の非課税限度額は、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。
なお、当該金額が10万円を超える場合は10万円が非課税限度額となっています。
また、遠距離通勤者が新幹線を利用した場合の運賃等の額も「経済的かつ合理的方法」ということであれば限度額までは非課税対象です。
しかし、グリーン車の特別車両料金は非課税対象に含まれません。
◆マイカーや自転車のみで通勤している場合
マイカーなどで通勤している人のガソリン代や駐車場代の非課税限度額は、片道の通勤距離に応じて各々定められています。
また、片道15キロメートル以上の人が電車やバスを利用して通勤しているとみなした時の定期券1カ月の金額が、それぞれの限度額を超える時はその金額が限度額となります。
更に、この場合に他に利用できる交通機関がなければ10万円を限度として通勤距離に応じたJRの地方交通線の通勤定期券1カ月当たりの金額で判定することもできます。
◆電車やバスと合わせてマイカーを使う場合
この場合も非課税となる限度額は電車等の通勤定期券等の金額とマイカー等の片道の距離による非課税額を合計したものとなりますが、10万円を限度として超過金額は給与として課税されます。
◆専業主婦は、幾らまで仕事をしたら良いのか?
専業主婦の妻がパートで働きに出た場合は幾らまでなら稼いでよいのか? という質問をよくいただきます。
専業主婦がパートで働く場合年収「100万円」「103万円」「130万円」の3つのハードルがあります。
これは「妻に住民税がかかる。」「妻に所得税がかかる」「社会保険の扶養から外れる」ということを意味します。
◆100万円のわけ
住民税がかかってきます。しかも住民税の基礎控除は、33万円です。
100.1万円の給与があった場合は、給与所得控除は65万円ですから、
100.1万-65万-33万=2.1万円に住民税の所得割2,100円と均等割4,000円がかかってきます。
したがって、手取りは返って減ってしまうことになります。
◆103万円のわけ
一番よく耳にする数字だと思います、これは所得税の課税されない上限です。
給与所得から給与所得控除65万円と基礎控除38万円が引けますので、65万+38万=103万円ということになります。
これを超えなければ所得税がかかりません。夫は配偶者控除を受けられます。
しかし103万円を超えても夫の年収が、1,000万円以下ならば配偶者特別控除が使えます。
141万円まで概ね5万円刻みで控除は少なくなりますが、夫の税金負担増を合わせても、住民税のような、負担逆転現象は起きませんので、必要以上に気にする必要はありません。
但し、夫の年収が1,000万円超の場合は配偶者特別控除が使えませんのでご留意下さい。
もう1点気をつける必要があります。
ご主人の勤務先で所得税の配偶者控除の適用がある場合に限り家族手当を支給する規定になっている場合には、103万円を超えると家族手当の支給もなくなってしまいます。
◆130万円のわけ
妻の収入が130万円以下の場合は夫の扶養として夫の会社の社会保険に加入出来るからです。
妻の収入が130万円を超えると妻の勤務先の社会保険に加入するか、国民健康保険に加入する必要があり、また国民年金の支払いも必要になります。
妻が40歳以上だと介護保険料の負担もあります。
妻が仮に132万(月11万円)パート収入があったとすると勤務先で健康保険に加入して年間約7万円の保険料負担になります。
さらに、年金保険料の負担も発生します。
今までは専業主婦でしたから夫の年金に相乗りできましたが、パート先の厚生年金保険に加入するか、国民年金の被保険者として保険料の納付が必要になります。
厚生年金保険の場合は、年間約10.6万円(8,831円×12ヶ月)の保険料負担になります。
※130万円以下であっても勤務時間が正社員の3/4以上の場合には、社会保険に加入しなくてはなりません。
細かくは、さらにいろいろと注意点があります。
さらにお知りになりたい方は、私の著書
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◆新卒者に対する就職支援の強化
長引く不況の影響もあってか今年の大学新卒の就職率55.8%(9月1日現在)との報道を日常的に目にする今日この頃ですが厚生労働省は、将来ある新卒者の就職の実現に全力で取り組む事として、全都道府県労働局に新卒者等が利用し易い専門のハローワーク、「新卒応援ハローワーク」を設置しました。
既卒者の就職を促進するため「新卒者就職実現プロジェクト」として、大学・高校等を卒業後3年以内の既卒者を正規雇用へ向けて育成するため、有期で雇用し、その後正規雇用へ移行させる事業主に対する助成金を創設しました。
◆3年以内既卒者トライアル雇用奨励金
⇒対象事業主
既卒者トライアル求人をハローワークまたは新卒応援ハローワークに提出し、それらの紹介により、原則3ヵ月の有期雇用をし、その後に正規雇用で雇い入れた事業主
⇒奨励金支給額
(1)有期雇用期間(原則3ヵ月)10万円/月/1人(MAX30万円)
(2)有期雇用終了後の正規雇用での雇入れ・・・50万円/1人/(雇入れから3ヵ月後に支給)
⇒支給対象労働者
大学等を卒業後3年以内の既卒者で1年以上、同一事業主に正規雇用された経験のない人。
ハローワークに求職登録している人でH20年3月以降の新規学卒者、中学・高校・高専・大学・大学院・専修学校等卒業者
が対象です。
◆3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金
⇒対象事業主
大学等の既卒者を正規雇用する事業主、又は卒業後3年以内の大学等の既卒者も応募可能な新卒求人を、ハローワーク又は新卒応援はハローワークに提出しそこからの紹介で正規雇用した事業主
⇒奨励金支給額
正規雇用での雇入れから6ヵ月経過後に、100万円を支給(同一事業所の支給は1回限り)
⇒支給対象労働者
3年以内既卒者トライアル雇用の場合と同じ要件ですがこの助成金の大学等とは短大・大学・大学院・高専及び専修学校卒業者となっています。
◆1000万円以上の預金に2%課税
テレビ朝日 「スーパーモーニング」で、消費税に代わる税の一種として貯蓄税の創設が話題として採り上げられていました。
一人当たり預金残高1000万円超に対して毎年2%の課税をする、ということのようです。
逆進性が回避できるというのが売りで、そのためには納税者番号制度の導入が必須とのことです。
◆提案のネライは何か
銀行で眠っている死に金が市場に出回ってくるので消費が促進され、経済の活性化に役立つと素直に賛同する意見があれば、金持ちへの課税なのだから所得再分配効果が期待できるとひがみの税制支持者も喜び、提案者が証券会社のエコノミストだということで、株式投資への促進策としての提案だろうとか、預金が国債の購入にシフトするので財務省の裏の手とか、納税者番号制度導入気運への冷や水効果とか、にわか評論家が百花総鳴しています。
◆税金の種類は財産税
実現可能性のない提案のように見えますが、現実に在る財産への課税ということでは、この手の税金は財産税に分類されます。
固定資産税や都市計画税や自動車税は財産税の性格を持っています。バブル時に創設された地価税は純粋の財産税です。
話題の貯蓄税と似ているのは、個人財産500万円超に対して0.5%~3%の累進課税をした昭和25年の富裕税です。
富裕税は捕捉可能なすべての財産を対象にし、税率が4段階であるところが異なります。富裕税法は3年でもって廃止となっています。
◆もっと過酷な税金もある
●戦時補償特別税 :
戦時中に発生した民間企業の政府に対する未払代金の請求権に100%の課税を行いました。実質の踏み倒しです。
踏み倒さないまでも、戦前の国公債は戦後の100倍とも400倍とも言われるインフレで事実上デフォルトされました。
●財産税 :
個人財産10万円超に対して25%~90%の累進税を課した昭和21年11月の「財産税法」による課税です。これも当然1回限りの税です。
●非戦災者特別税 :
戦災者と非戦災者がいるのは不公平ということから、家屋を借りている非戦災者に対して、家賃の3ヶ月分、家屋を所有している者に
対しては6か月分を課税しました。 これも1回限りの税でした。