ミニコラム
2010/03/23 掲載
《コラム》子ども手当と配偶者控除廃止の関係
■扶養控除廃止は見送られたが…
政府の2010年度税制改正大綱が決定され、当初予定されていた、扶養控除の廃止は子ども手当の支給される15歳以下の「年少部分」の廃止のみとなり、配偶者控除廃止も見送られました。
夏の参院選を意識しての事か、マイナスの影響を受ける世帯はほとんどなかったものの子ども手当等の財源は赤字国債で賄われる事となりました。
■子ども手当に必要な財源は毎年五兆円
しかし、今後の財源のことを考えると11年度以降に配偶者控除の廃止が見直されないとも限りません。
もし配偶者控除が廃止された場合、女性の働き方は大きく変わってくる事が考えられます。
今まで妻がパートタイマー等で年収103万円以下であれば、夫の収入の配偶者控除を受ける事ができ、その分所得税は安くなっていました。
社会保険も夫の被扶養者として妻は保険料負担をしていませんでした。
毎年年末になると年収を抑えるため、多忙な時期に仕事を休んでしまうパートさんもいて、困ってしまったという企業もあった事でしょう。
■子ども手当はパートの社保加入につながる?
ところが、配偶者控除の廃止が実施されると103万円の壁はなくなり、少しでも長い時間を働きたい人が増えて来る事が予想されます。
これは一見、長い時間働いてもらえることが良いように見えるものの、一方ではパートタイマーの社会保険加入が促進されていくかもしれないという事が考えられます。
現在は一般の従業員の4分の3以上の労働日数、労働時間を勤務すると加入対象となり、例えば1週の労働時間が一般の人が40時間の事務所では週30時間以上働く人が対象となります。今まで103万円以内で勤務していた人は、控除の壁がなくなると、より長い勤務時間を希望し、再び社会保険の適用拡大論議が高まるやもしれません。
子ども手当は企業には直接関係のない事のようですが先行きは影響を受けないとは言えないかもしれません。
2010/03/23 掲載
《コラム》給与における間接強制
■給与の税金確定の構造
年末調整においては、給与所得者の提出した扶養控除等申告書などに記載された申告内容に基づいて、事務処理がされます。
その際、扶養親族の該当性の適否判定は記載者本人がするのであって、記載された内容の適否についての調査義務・調査権限は給与の支払者にはありません。
ところで、税務署での調査により、記載内容の適正さに疑問が指摘される場合、給与所得者本人にはその通知は送られず、給与支払者に送られてきます。
扶養控除等申告書の記載を修正させて年末調整をやり直すことを要求してくるのです。それで、本人が修正に応じ、年末調整がやり直しとなり、不足税額を納付すると、その後不納付加算税や延滞税の追徴がなされます。
給与支払者には落ち度がないのに、このペナルティーは理不尽ですが、多くの場合、不正記載者本人に追徴額の転嫁がされているのではないかと思われます。
■不正記載を修正できないときは
不正記載があっても、扶養控除等申告書の記載の修正がない限り、年末調整のやり直しはできませんので、すでに退職してしまった人の場合にはどうすればよいのでしょうか。
給与支払者に特に過失がなく、税額を再計算して徴収し直し、納付することもできない場合には、給与支払者をそれ以上追及しない、との通達があります。
そんな場合に、税務署長が退職した給与所得者本人に対して直接に所得税額の決定をして不足税額とペナルティーの追徴処置をしたという事例がありました。不正申告者を放置しないとの趣旨ですが、この決定処置は奇しくも国税不服審判所にて取消しの憂き目に会っています。
なぜかというと、この場合のような給与所得者は年末調整されるだけで、確定申告をする義務がなく、義務がない者への税務署長の直接的納税強制の決定には法律の根拠がない、ということです。
■給与の確定申告不要制度の不備
この事例は、別居母親に月額約10万円程度の家賃相当額を援助していたことから扶養親族として届け出ていたというもので、もし、本人が退職しておらず、税務署の指摘にも応ぜず、税務署長が会社宛に追徴処分をし、会社は本人に転嫁する、というような場合には、誰と誰が争うことになるのか、法が不備で混沌としてきそうです。
2010/03/16 掲載
《コラム》為替差益の節税方法(個人所得の場合)
■急激な円高
このところの円高は輸出企業にとっては大変きついものがあります。2007年8月のサブプライムローンの問題が表面化する前のレートが1ドル124円だったのが、一時84円まで円高が進みました。投資家の間では70円台の円高もあるのではないか、長期的にはドルは下落していくのではないかと言われています。
また、その一方でこの円高はチャンスだと捉えて外貨預金に換える動きも出ています。今後円高になるか円安になるかについての予測はできませんが、外貨預金については、為替差益についての節税方法があります。元本が多ければ多いほどその効果はてきめんですが、リスクも大きくなることにはご留意下さい。
■外貨預金
一般的に外貨投資といえば外貨預金ではないでしょうか。一時期より金利が低くなったとはいえ、オーストラリアドルに関しては3%強の金利がつきます。
ただし金利とともに為替差益を狙うのであれば事情は変わってきます。外貨預金の為替差益については雑所得として総合課税が適用されます。最高で50%の累進課税となってしまい、所得が多い方ほど多くの税金を納めなければなりませんが、この税金を無くすことができるのです。
■外貨MMF
外貨預金とは似て非なるものがあります。それは外貨MMFという金融商品です。
外貨MMFとはマネー・マーケット・ファンドの略で公社債や短期金融商品を中心に運用されています。米国では現金に準ずる安全な金融商品とされています。
外貨MMFでは為替差益については非課税とされています。これは債券の譲渡益は非課税という大原則が貫かれているためです。
つまり、1ドル80円の時に外貨MMFを800万円分購入して1ドル120円の時に外貨MMF1200万円分を売却して為替差益400万円を得たとしても税金は取られない仕組みになっています。
外貨預金では同じケースの場合、最高税率の方ですと200万円の納税となります。
税法の解釈により似たような金融商品でも税金にこれほどの差が出てしまいます。
2010/03/09 掲載
《コラム》景品に関する規制とは
■ 懸賞や景品の金額に制限があることをご存知ですか?
不当景品類及び不当表示防止法は、景品類の最高額や総額等を規制し、過大な景品類の応酬による不健全な競争を防止しています。
規制を受ける「景品類」とは、(1)顧客を誘引するための手段として、(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する、(3)物品、金銭その他の経済上の利益をいいます。値引きやアフターサービスは「景品類」に含まれません。
そして、「景品類」の提供方法により、「懸賞」、「総付景品」に大別され、各々景品類の限度額等が定められています。消費者庁は、違反した事業者に対し、景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができます。
■ 懸賞にかかる規制とは?
「懸賞」とは、商品・サービスの利用者に対し、偶然性(くじ等)、特定行為の優劣(クイズ等)等によって景品類を提供することをいい、複数の事業者が参加して行う「共同懸賞」、それ以外の「一般懸賞」と分けて規制されています。
一般懸賞における規制は、①最高額が、取引金額が5,000円未満であればその20倍、5,000円以上であれば10万円を限度とし、かつ、②総額は、懸賞にかかる取引予定総額の2%がその上限となります。共同懸賞の場合には、①最高額が一律30万円で、かつ、②総額は、懸賞にかかる取引予定総額の3%がその上限となります。
■ 懸賞によらない景品等の場合は?
これに対し、一般消費者に対し、「懸賞」によらずに提供される景品類を「総付景品(そうづけけいひん)」といいます。商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく(申込順、先着順も含む)提供する商品・サービスがこれです。
こちらは、取引価格が1,000円未満であれば200円、1,000円以上であればその2割が上限となります。
■ その他
なお、新聞、雑誌、不動産、医療について、別途規制があります。
実際の計画で、規制に該当するか否かを判断するのは、意外と難しいので、消費者庁に問い合わせるか、以下のHPをチェックすることをお勧めします。
2010/03/09 掲載
《コラム》景品と税金
■懸賞などとしての受取景品の税金
商品・サービスの利用者が、偶然性(福引くじ等)、特定行為の優劣(懸賞クイズ等)、市場における偶然の遭遇(街頭配布や来店者配布)によって景品の提供を受ける場合は、商品・サービスとの対価関係がなく、所得としては事業上の取引でなければ一時所得となり、50万円の特別控除後2分の1課税となります。
■懸賞によらない受取景品
商品・サービスの利用者が、偶然性を伴わない一定の利用量基準によって差別的に景品を受取る場合には、商品・サービスとの対価関係が認められとして、一時所得以外の所得となります。
■例えば「宝くじ付定期預金」の場合
「宝くじ付定期預金」を契約した顧客に対し景品として宝くじを交付することとしている場合、預入金額及び預入期間に応じて宝くじを交付するものは、元本の使用の対価と認められるので、宝くじの発売価格相当額が預貯金の利子に該当することとなります。
■個人向け国債販売キャンペーン景品の場合
キャンペーン期間中、個人向け国債を新規資金にて100万円以上購入した顧客が、その購入の多寡による一定の基準でギフトカードもしくはキャッシュバックを受け取れる当該景品の交付は、国債の購入という行為に密接に関連してなされているものと認められ、対価性を有しており、かつ利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡及び一時の各所得のいずれにも該当しないことから、雑所得とされます。
■景品交付側の費用処理
法人が商品等の抽選券付販売により当選者に金銭若しくは景品を交付し、又は旅行、観劇等に招待することとしている場合には、これらに要する費用の額は、当選者から抽選券の引換えの請求があった日又は旅行等を実施した日の属する事業年度の損金の額に算入します。
ただし、当選者からの請求を待たないで、法人が金銭又は景品を送付することとしている場合には、抽選の日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。