税制改正

【平成23年度税制改正】

与党税制改正大綱に対する新聞各社の社説

大局観がない野田税制大綱(2011年12月11日 日本経済新聞社説)

政府が2012年度の税制改正大綱を決めた。経済成長と財政再建の両立という大局的な視点を欠いたまま、小手先の見直しに終始した印象は否めない。野田政権は東日本大震災の復興増税に続き、消費税増税の具体化も急ぐ。ほかの懸案に取り組む余裕はなかったのだろうが、この大綱ではとても満足できない。焦点の自動車課税では、自動車重量税の軽減を打ち出した。エコカー減税は対象を絞って延長し、11年度第4次補正予算案でエコカー補助金も手当てする。欧州危機の広がりや超円高の影響を考慮すれば、景気への配慮は必要だろう。取得、保有、利用の3段階にわたる自動車課税の簡素化も避けて通れない。だが民主党内の減税要求にこたえるため、理念なき妥協を迫られたのが実情である。将来の消費税増税も念頭に置き、自動車課税の抜本改革を再検討すべきだ。省エネ住宅向けのローン減税や企業の研究開発減税の延長・拡充などは、一定の効果を期待できる。しかし小粒な減税を散発的に実施しても、日本経済の活性化には力不足だろう。確固たる成長戦略に基づき、法人税減税などの議論を続けなければならない。大綱には11年度税制改正で実現しなかった項目も並んだ。年収の高いサラリーマンの給与所得控除に上限を設けるなど、高所得者だけに所得税増税を強いるのは疑問が残る。消費税や所得税を含む抜本税制改革のなかで、均衡のとれた負担のあり方を考えるべきだ。地球温暖化対策税(環境税)の導入も再び盛り込んだ。温暖化対策の一環として妥当な措置である。だが自民党が反対したままでは、今度もたなざらしになりかねない。法案の成立に向け、与野党が妥協点を探ってほしい。野田政権下で復活した民主党税制調査会が、特定業界の利益を代弁するような要求を重ねたのは気がかりだ。年内をめどにまとめる消費税増税の素案づくりでは、与党の責任を果たしてほしい。

 

税制改正大綱 場当たり的な対応繰り返すな(2011年12月11日付・読売社説)

住宅、中小企業、環境関連などの減税メニューが並ぶが、全体に小粒の内容にとどまった。日本経済へのてこ入れ効果は未知数である。 政府が2012年度税制改正大綱を決めた。社会保障と税の一体改革に伴う消費税の本格論議を前に、利害調整が難しい配偶者控除やたばこ税見直しなど大型案件は議論交錯を恐れ、先送りした。 その場しのぎの対応を続ける限り経済は活性化せず、深刻な税収不足からの脱却も望めまい。 政府・与党は、消費税率引き上げも含め、包括的な税制改革に早急に取り組む必要がある。 来年度税制改正で唯一、大きな争点となった自動車課税は、自動車重量税を減税し、来春期限切れとなるエコカー減税を延長することで決着した。エコカー販売促進に向けた補助金も復活させる。 自動車業界と民主党が、「販売不振の一因は重い税負担にある」として取得税と重量税の廃止を強く求め、政府と民主党が深夜まで迷走を続けた末の妥結である。 環境に配慮した車を普及させる政策目標に沿ったエコカー減税の延長は理解できる。 だが、十分な代替財源が手当てできないのに、重量税の減税や補助金まで認めたのは甘すぎる。 民主党は最後まで、車の保有台数が多い地方や、自動車業界と関係労組に配慮したとみられる。 財政再建の重要性を顧みず、選挙を意識した大衆迎合主義がまたも幅をきかせた形だ。 こんな調子では、反対論の根強い消費税率引き上げを実現できるのか、大きな疑問符が付く。 政府・与党の場当たり的な姿勢は、11年度税制改正に盛り込みながら、野党の反対で成立していない項目の扱いにも表れている。 政府は12年度税制改正大綱で、高所得者を対象にした給与所得控除の縮小、石油石炭税の課税を強化する地球温暖化対策税の導入などを改めて提案した。 内容を変えぬまま再提案したところで、ねじれ国会では、再び否決されるだけではないか。 もともと11年度改正に盛り込まれた増税項目は、法人税の大幅減税で生じる財源不足を穴埋めすることを優先した結果、議論を尽くさず見切り発車したものが多い。仕切り直すのが筋だろう。 民主党政権は、比較的反発の少ない高所得層に税負担を集中させる傾向が強い。公平性を欠くだけでなく、労働意欲や経済活力を失わせる逆効果が懸念される。看過できない問題である。

 

税制改正―この先が思いやられる(2011年12月11日付朝日新聞社説)

政府・与党がすったもんだの議論の末、来年度の税制改正案をまとめた。 焦点になったのは、車検のたびに納める自動車重量税と、購入時に支払う自動車取得税の見直しだ。今年度の税収はそれぞれ約7千億円と2千億円。排ガス基準の達成度や燃費性能によって両税を軽くするエコカー減税の延長問題もからんだ。 結論はこうだ。 重量税は、本来の税額に上乗せしている3千億円の半分、1500億円を減税する。取得税は変えない。エコカー減税は対象車種を絞ったうえで、来春から3年間延長する。さらにエコカー補助金を復活させ、今年度第4次補正予算に3千億円を計上する。 政府税制調査会の議論では、各省が激しく対立した。自動車業界の要望を受けて、経済産業省は2税の廃止を主張。財務省は財政難を理由に減税に反対した。2税は地方自治体の財源となっており、地方税を所管する総務省は財務省と歩調を合わせた。環境省と国土交通省はエコカー減税の維持を訴えた。 一方、民主党の税制調査会は「廃止、抜本的な見直し」を政府に強く求めた。次の総選挙を意識し、減税志向が強い党内の空気を踏まえての主張だ。 結論は、見事なまでの妥協の産物である。補正予算まで動員した決着にあきれるほかない。 自動車課税の抜本見直しは不可欠だ。2税とも道路整備にあてる道路特定財源だったが、一般財源化で課税の根拠が乏しくなった。取得時に消費税、保有には自動車税もかかり、二重課税となっている。 円高、大震災にタイの洪水も重なって、自動車業界は苦境にある。ただ、単純な大幅減税で財政赤字を拡大するわけにもいかない。環境対策も重要だ。ガソリンなどの燃料にかかる税を含め、どう作り直すか。 省益にとらわれず、複眼思考で取り組むべきテーマだ。まさに「政治」の出番ではないか。

政権交代を機に、政府税調のメンバーは有識者から各省の副大臣、政務官ら政治家へ一新された。ところが、会合では省益丸出しの発言が大半だった。野田政権で復活した民主党税調は、政府への陳情・圧力団体かと見まごう状況だった。 政府・与党は社会保障と税の一体改革の素案について議論を始め、消費税増税の具体案を年内にまとめる。その前哨戦となった来年度税制改正がこんな調子では、今後が心配になる。 関係者は猛省し、消費税増税論議に臨んでもらいたい。

 

政府税制大綱 将来構想が見えない(2011年12月11日付信濃毎日新聞)

政府が、2012年度の税制改正大綱を閣議決定した。 自動車にかかる税の軽減や、省エネを意識した減税にいくらか特徴が出たものの、課題の増税項目は先送りするなど、大きな変更点は見当たらない。 一定の増税で逼迫(ひっぱく)する財政の再建に道筋を付けるのか、逆に減税を前面に出して景気の下支えを図るのか。政府の構想が感じられない中身となっている。 消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革が固まっていない。抜本的な税制改正に手を付けられないのは当然だろう。 政府は、大綱に基づく税制改正法案を来年の通常国会に提出する。与野党は、消費税を含む中長期的な税制の在り方に踏み込み、建設的に議論してほしい。 政府と民主党の調整が最後まで難航したのは自動車税だった。党は、自動車取得税と自動車重量税の廃止を求めたが、財務省などは代わりの財源がないと主張。結局、重量税を1500億円ほど軽減することで決着した。 来春で期限切れとなる「エコカー減税」は、対象を環境性能に優れた車種に絞って3年間延長することとなった。 エコ関連では、太陽光発電パネルなどを設置した「省エネ住宅」の購入者を対象に、新たな住宅ローン減税を創設。本年度は野党の反対で見送った環境税の導入を再び掲げている。 環境税は石油石炭税に上乗せして徴収する。ガソリンや灯油の価格上昇につながる。経済界からは、国際間の競争力低下を懸念する声が出ている。 しかし、福島第1原発事故の影響もあって遅れている温暖化対策を考えれば、必要な税目だろう。政府は、使い道や見込まれる効果を明確にし、国民の理解を得られるよう努めるべきだ。 配偶者控除の廃止・縮小、たばこ税の増税、酒税の見直しなどは軒並み、13年度以降に先送りされた。復興増税や消費税増税の論議を控え、負担感を和らげたい狙いがあるとみられる。 時期の問題ではない。問われるのは政府の姿勢だ。 厳しい国の財政状況は、多くの国民が承知している。増税するのなら、国が率先して身を削るべきだ。行革や歳出のむだの洗い出しを徹底することが欠かせない。 税の在り方は本来、社会保障や経済戦略、少子化対策などと一体的に論じる必要がある。場当たり的でなく、国の将来像に裏打ちされた税制が求められる。

 

【平成23年度税制改正】

平成23年度税制改正の解説(財務省)平成23年10月19日確認

平成23年度税制改正要望の結果概要(総務省。PDFファイル)平成22年12月17日確認

平成23年度経済産業省関係の税制改正について(経済産業省。PDFファイル)平成22年12月17日確認

平成23年度税制改正大綱における農林水産関係税制事項について(農林水産省)平成22年12月17日確認

平成23年度税制改正主要項目結果概要(国土交通省。PDFファイル)平成22年12月17日確認

与党税制改正大綱に対する新聞各社の社説

・日本経済新聞

・読売新聞

・朝日新聞

・毎日新聞

 

【所得税】

平成22年分 所得税の改正のあらまし(国税庁。PDFファイル)平成22年12月17日確認

【源泉所得税】

平成22年4月 源泉所得税の改正のあらまし(国税庁。PDFファイル)平成22年12月17日確認

 

【贈与税】

平成22年分、平成23年分 住宅取得等資金の贈与税の非課税のあらまし(PDFファイル。国税庁)平成22年12月17日確認