《コラム》税金にも時効がある?

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こんにちは。税理士の米津晋次です。(名古屋税理士会所属)  <2020年7月3日更新>

今回は、税金にも時効があるのか?という点についてご紹介したいと思います。
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確かに税金にも時効があります。税務署等から一定期間税金の請求をされなければ、納税義務が消滅します。

課税する場合の時効

まず、国税(国に納める税金)が無申告の場合に課税したり、申告した内容についての追加課税する場合の時効までの期間についてお答えすると、一律に何年ということではなく、状況によって3年・5年(贈与税は6年)・7年の3つの場合に分けられます。

この場合は、正式には「時効」とは言わず「賦課権の除斥期間」(定められた年数が経過すれば権利が消滅する期間)といいます。
課税については、賦課権の除斥期間を経過するだけで、完全に賦課権がなくなります。
後で説明する税金の徴収に関する時効のように、期間が延びることはありません。

3年の時効(除斥期間)

税金の申告書を申告期限内に提出した場合の時効までの期間は、原則申告期限の翌日から3年です。(国税通則法70条)
例えば、平成26年に贈与を受けた場合の贈与税の申告期限は平成27年3月15日です。
したがって、その翌日から3年後の平成30年3月15日で時効となります。
つまり、申告した場合は、3年を経過してから税務署が税金が不足していることに気が付いても、不足分の税金を納めるように通知してくることはありません。
ただし、脱税の意思があった場合には、その限りではありません。(「7年の時効」参照)

5年(贈与税は6年)の時効(除斥期間)

申告期限内に申告書の提出をしていない場合は、原則申告期限の翌日から5年で時効となります。(国税通則法70条)

ただし例外があります。もし脱税の意思があった場合は、7年になります。(「7年の時効」参照)

また、脱税の意思がなくても、平成16年以降の贈与税については、時効までの期間が6年とほかの国税よりも1年長くなっています。(相続税法36条)

7年の時効(除斥期間)

偽りまたは不正の行為のある場合、いわゆる「脱税」に該当する場合の時効はさらに長く、申告期限の翌日から7年となっています。(国税通則法70条)


税金の徴収に関する時効

徴収についての時効の原則

税金の徴収に関する時効ついては、その税金の通常の納付期限から5年間となっています。(国税通則法第72条)

所得税や贈与税の納付期限は翌年3月15日ですから、それから5年で時効を迎えることになります。

実際は、徴収について永遠に時効はこない

税金の徴収に関する時効までの期間は5年でも、課税する場合のように、期間が経過すれば時効が成立するという訳ではありません。
途中で督促状を送ったり、差し押さえを行えば、時効のカウントはリセットされて(「時効の中断」といいます。)、督促状の送付日から新たに時効までの期間がスタートになります。

税務署等が督促をしない、ということはありませんので、税金の徴収については時効を迎えることはなく、永遠に納税義務が継続されるのです。


刑事告発される場合の時効

上記は、税金の時効や除斥期間です。
脱税額等によっては、国税犯則取締法により刑罰が科せられることがあります。
この刑事告発されるまでの時効(「公訴時効」といいます。)は、5年となっています。


【税務署は贈与はなかなか補足できないが・・】

一般的に贈与したことが税務署に知られる可能性は低いです。
税務署がいちいち全員の通帳を調べることはありませんし、たとえ税務署が通帳を調べたとしても、振り込まれたお金のうちどれが贈与されたのかを判断できないのです。
ただし、贈与が発覚しやすい場合があります。

相続があった場合

ひとつは、相続が発生したときです。
相続税の税務調査で贈与の有無もチェックされます。
3年以内の贈与がなかったかどうかは、必ず確認します。
3年以内に贈与があった場合には、その贈与分も相続財産とする規定があるからです。
この場合は、贈与税の基礎控除(非課税枠)である110万円以下の贈与も対象になります。

また、相続人名義の預金について、年収からみて、そんなに預金残高があるはずがない、というチェックをすることもあります。
たとえば、専業主婦だった奥様の通帳残高が3000万円あったとすると、この残高はどうやってできたものなのかを確認してきます。
親からの相続など、理由を説明できればいいのですが、そうでなければ相続財産と認定してくるのです。
これが「名義預金」と呼ばれるものです。
通帳の名義は違うけれど、その通帳は実質亡くなったご主人のものという解釈です。
いくら10年以上前にもらったものだから贈与の時効が有効だと主張してもダメです。

不動産などを購入した場合

それから、不動産など高額なものを購入等したときです。その資金を銀行融資やローン以外にどこから調達したのかを税務署は注目しています。税務署からお尋ねが届く場合があります。
3000万円でマンションを購入し、その住宅ローンが1000万円しか借りていなければ、あとの2000万円はどうしたのか、贈与をうけたのではないのか、ということです。
通常贈与が税務署にわかりにくくても、このような場合に発覚すれば、多額の贈与と認定されることが多いです。

また、贈与税は税金の中でも税率がもっとも高いものですので、贈与税だけでも相当な金額になります。
そしてさらには次に説明する加算税や延滞税が追い打ちをかけてくるのです。


本税以外にかかる加算税・延滞税

税金を滞納した場合には、その税金(本税)だけを納めればいいわけではありません。納税が遅れたことに対する罰金的な意味の「加算税(金)」や、延滞利息に意味の「延滞税(金)」も納める義務もあります。

加算税(金)

まず、加算税(金)の種類とその本税に対する税率は次のようになっています。
  • 申告しなかった場合=無申告加算税(金):年15%から20%(※申告期限から2週間以内であればかかりません。それ以降でも指摘前に自己告すれば5%です。)
  • 申告した税金が少なかった場合=過少申告加算税(金):年15%(※指摘前に自己申告すればかかりません。)
  • 悪質と認定された場合=重加算税(金):年35%から40%

延滞税(金)

延滞利息である延滞税(金)は、納付するまでの日数によって最近は次にようになっています。

<納付期限から2か月以内>

  • 平成30年1月1日から令和02年12月31日までの期間は、年2.6%
  • 平成29年1月1日から平成29年12月31日までの期間は、年2.7%
  • 平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、年2.8%
  • 平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年2.9%
  • 平成22年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、年4.3%
  • 平成21年1月1日から平成21年12月31日までの期間は、年4.5%

<納付期限から2か月超>

  • 平成30年1月1日から令和02年12月31日までの期間は、年8.9%
  • 平成29年1月1日から平成29年12月31日までの期間は、年9.0%
  • 平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、年9.1%
  • 平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年9.2%
  • 平成21年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、年14.6%
延滞税の改正により平成26年からかなり安くはなりましたが、かなりの高率になっています。
また、本税が高額であれば、加算税・延滞税だけでも相当な金額になります。
なお、いくら本税を納付しても延滞税が未納である場合には時効が停止されますので、延滞税の時効はありません。


申告・納税のすすめ

このように、時効を意図的に狙うような場合は脱税とみなされ、国税犯則取締法により刑罰が科せられることもあります。

税金を滞納している場合には、永遠に滞納が消えることはなく、多額の「加算税や延滞税」などが課されます。
また、金融機関からの融資が受けられなくなったりもします。

納税は国民の義務です。納税していないと精神的な不安も持ち続けることになります。
素直に申告し、納税されることをおすすめします。


※このコラムについてのご質問はお受けいたしません。ご了承ください。


【参考】→税金(住民税・所得税など)の差し押さえ|口座・給与・不動産はどうなる・どうする?

【投稿者:税理士 米津晋次