《コラム》必要経費の業務関連性とは

◆弁護士会役員活動費の必要経費性についての高裁判決 弁護士会の役員等を務めた弁護士が、役員活動に伴って支出した懇親会費等が事業所得の計算上、必要経費に当たる否かの判断が争われた事件で、東京高裁(春日通良裁判長)は、弁護士として行う事業の遂行上必要な支出であれば、弁護士会等の役員等として行った活動に要した費用も、その事業所得の一般対応の必要経費に該当すると判断して一審の判断を否定、弁護士側の主張を一部認める逆転判決を言い渡しました。 この事件は、弁護士会等の役員等を務めた弁護士が、役員等としての活動に伴って支出した懇親会費等を事業所得の計算上、必要経費に算入して申告したところ、税務署から更正処分等を受けたためその取消しを求めて提訴したものです。 納税者逆転勝訴で、その判決理由において「必要経費の業務関連性」が明示されました。すべての事業所得に関わりのある、意義ある判決と言えます。 ◆審判所裁決・地裁判決との相違 必要経費の該当性についての、税務署の見解は「当該事業の業務と直接関係を持ち、かつ、業務の遂行上専ら必要」なもの、ということでした。 国税不服審判所の裁決では、「弁護士業務に直接の関連を有し、業務遂行上通常必要な支出」に限るとし、「専ら→通常」に変えました。 地裁判決は、「事業と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要」であることを要すとし、「通常必要→必要」にゆるめました。 高裁判決は、「事業所得を生ずべき業務の遂行上必要」なものであればよいとし、「直接関係→不要」としました。 ◆高裁判決は条文に原理的 所得税法では、必要経費に算入すべき金額として ①総収入金額に係る売上原価 ②当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額 ③その年における販売費、一般管理費 ④所得を生ずべき業務について生じた費用 をあげています。 因みに、売り上げとのひもつき関係が要求されているのは①の「売上原価」と②の「直接に要した費用」のみで、③の販管費と④の業務関連費については売上とのひも付き関係は要求されていません。 高裁判決によると、条文の上での、④の「所得を生ずべき業務」とは、収入を獲得することに直接結び付くものである必要はなく、社会通念に照らして相当であればよい、という理解です。 ◆勇み足だった税務署 税理士会や弁護士会の存在を無視するような勇み足の税務更正処分だったことは、当初から言われていたことで、妥当な落とし所で決着した、という印象です。 今回の訴訟は、税理士会を始め他の士業団体の役員等を務める人の必要経費にも影響すると考えられるため、いわゆる士業の必要経費性の解釈をめぐって一つの指針を示すものとして意義の深い判決となりました。 ただし、国側は控訴審の判決内容を不服として上告しており、最高裁が上告を受理するかしないかその判断に注目が集まっています。