政府税制大綱 将来構想が見えない(2011年12月11日付信濃毎日新聞)
政府が、2012年度の税制改正大綱を閣議決定した。
自動車にかかる税の軽減や、省エネを意識した減税にいくらか特徴が出たものの、課題の増税項目は先送りするなど、大きな変更点は見当たらない。
一定の増税で逼迫(ひっぱく)する財政の再建に道筋を付けるのか、逆に減税を前面に出して景気の下支えを図るのか。政府の構想が感じられない中身となっている。
消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革が固まっていない。抜本的な税制改正に手を付けられないのは当然だろう。
政府は、大綱に基づく税制改正法案を来年の通常国会に提出する。与野党は、消費税を含む中長期的な税制の在り方に踏み込み、建設的に議論してほしい。
政府と民主党の調整が最後まで難航したのは自動車税だった。党は、自動車取得税と自動車重量税の廃止を求めたが、財務省などは代わりの財源がないと主張。結局、重量税を1500億円ほど軽減することで決着した。
来春で期限切れとなる「エコカー減税」は、対象を環境性能に優れた車種に絞って3年間延長することとなった。
エコ関連では、太陽光発電パネルなどを設置した「省エネ住宅」の購入者を対象に、新たな住宅ローン減税を創設。本年度は野党の反対で見送った環境税の導入を再び掲げている。
環境税は石油石炭税に上乗せして徴収する。ガソリンや灯油の価格上昇につながる。経済界からは、国際間の競争力低下を懸念する声が出ている。
しかし、福島第1原発事故の影響もあって遅れている温暖化対策を考えれば、必要な税目だろう。政府は、使い道や見込まれる効果を明確にし、国民の理解を得られるよう努めるべきだ。
配偶者控除の廃止・縮小、たばこ税の増税、酒税の見直しなどは軒並み、13年度以降に先送りされた。復興増税や消費税増税の論議を控え、負担感を和らげたい狙いがあるとみられる。
時期の問題ではない。問われるのは政府の姿勢だ。
厳しい国の財政状況は、多くの国民が承知している。増税するのなら、国が率先して身を削るべきだ。行革や歳出のむだの洗い出しを徹底することが欠かせない。
税の在り方は本来、社会保障や経済戦略、少子化対策などと一体的に論じる必要がある。場当たり的でなく、国の将来像に裏打ちされた税制が求められる。
(2011年12月11日付信濃毎日新聞)
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税制改正―この先が思いやられる(2011年12月11日付朝日新聞社説)
政府・与党がすったもんだの議論の末、来年度の税制改正案をまとめた。
焦点になったのは、車検のたびに納める自動車重量税と、購入時に支払う自動車取得税の見直しだ。今年度の税収はそれぞれ約7千億円と2千億円。排ガス基準の達成度や燃費性能によって両税を軽くするエコカー減税の延長問題もからんだ。
結論はこうだ。
重量税は、本来の税額に上乗せしている3千億円の半分、1500億円を減税する。取得税は変えない。エコカー減税は対象車種を絞ったうえで、来春から3年間延長する。さらにエコカー補助金を復活させ、今年度第4次補正予算に3千億円を計上する。
政府税制調査会の議論では、各省が激しく対立した。自動車業界の要望を受けて、経済産業省は2税の廃止を主張。財務省は財政難を理由に減税に反対した。2税は地方自治体の財源となっており、地方税を所管する総務省は財務省と歩調を合わせた。環境省と国土交通省はエコカー減税の維持を訴えた。
一方、民主党の税制調査会は「廃止、抜本的な見直し」を政府に強く求めた。次の総選挙を意識し、減税志向が強い党内の空気を踏まえての主張だ。
結論は、見事なまでの妥協の産物である。補正予算まで動員した決着にあきれるほかない。
自動車課税の抜本見直しは不可欠だ。2税とも道路整備にあてる道路特定財源だったが、一般財源化で課税の根拠が乏しくなった。取得時に消費税、保有には自動車税もかかり、二重課税となっている。
円高、大震災にタイの洪水も重なって、自動車業界は苦境にある。ただ、単純な大幅減税で財政赤字を拡大するわけにもいかない。環境対策も重要だ。ガソリンなどの燃料にかかる税を含め、どう作り直すか。
省益にとらわれず、複眼思考で取り組むべきテーマだ。まさに「政治」の出番ではないか。
政権交代を機に、政府税調のメンバーは有識者から各省の副大臣、政務官ら政治家へ一新された。ところが、会合では省益丸出しの発言が大半だった。野田政権で復活した民主党税調は、政府への陳情・圧力団体かと見まごう状況だった。
政府・与党は社会保障と税の一体改革の素案について議論を始め、消費税増税の具体案を年内にまとめる。その前哨戦となった来年度税制改正がこんな調子では、今後が心配になる。
関係者は猛省し、消費税増税論議に臨んでもらいたい。
(2011年12月11日付朝日新聞社説)
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大局観がない野田税制大綱(2011年12月11日 日本経済新聞社説)
政府が2012年度の税制改正大綱を決めた。経済成長と財政再建の両立という大局的な視点を欠いたまま、小手先の見直しに終始した印象は否めない。
野田政権は東日本大震災の復興増税に続き、消費税増税の具体化も急ぐ。ほかの懸案に取り組む余裕はなかったのだろうが、この大綱ではとても満足できない。
焦点の自動車課税では、自動車重量税の軽減を打ち出した。エコカー減税は対象を絞って延長し、11年度第4次補正予算案でエコカー補助金も手当てする。
欧州危機の広がりや超円高の影響を考慮すれば、景気への配慮は必要だろう。取得、保有、利用の3段階にわたる自動車課税の簡素化も避けて通れない。
だが民主党内の減税要求にこたえるため、理念なき妥協を迫られたのが実情である。将来の消費税増税も念頭に置き、自動車課税の抜本改革を再検討すべきだ。
省エネ住宅向けのローン減税や企業の研究開発減税の延長・拡充などは、一定の効果を期待できる。しかし小粒な減税を散発的に実施しても、日本経済の活性化には力不足だろう。確固たる成長戦略に基づき、法人税減税などの議論を続けなければならない。
大綱には11年度税制改正で実現しなかった項目も並んだ。年収の高いサラリーマンの給与所得控除に上限を設けるなど、高所得者だけに所得税増税を強いるのは疑問が残る。消費税や所得税を含む抜本税制改革のなかで、均衡のとれた負担のあり方を考えるべきだ。
地球温暖化対策税(環境税)の導入も再び盛り込んだ。温暖化対策の一環として妥当な措置である。だが自民党が反対したままでは、今度もたなざらしになりかねない。法案の成立に向け、与野党が妥協点を探ってほしい。
野田政権下で復活した民主党税制調査会が、特定業界の利益を代弁するような要求を重ねたのは気がかりだ。年内をめどにまとめる消費税増税の素案づくりでは、与党の責任を果たしてほしい。
(2011年12月11日 日本経済新聞社説)
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税制改正大綱 場当たり的な対応繰り返すな(2011年12月11日付・読売社説)
住宅、中小企業、環境関連などの減税メニューが並ぶが、全体に小粒の内容にとどまった。日本経済へのてこ入れ効果は未知数である。
政府が2012年度税制改正大綱を決めた。社会保障と税の一体改革に伴う消費税の本格論議を前に、利害調整が難しい配偶者控除やたばこ税見直しなど大型案件は議論交錯を恐れ、先送りした。
その場しのぎの対応を続ける限り経済は活性化せず、深刻な税収不足からの脱却も望めまい。
政府・与党は、消費税率引き上げも含め、包括的な税制改革に早急に取り組む必要がある。
来年度税制改正で唯一、大きな争点となった自動車課税は、自動車重量税を減税し、来春期限切れとなるエコカー減税を延長することで決着した。エコカー販売促進に向けた補助金も復活させる。
自動車業界と民主党が、「販売不振の一因は重い税負担にある」として取得税と重量税の廃止を強く求め、政府と民主党が深夜まで迷走を続けた末の妥結である。
環境に配慮した車を普及させる政策目標に沿ったエコカー減税の延長は理解できる。
だが、十分な代替財源が手当てできないのに、重量税の減税や補助金まで認めたのは甘すぎる。
民主党は最後まで、車の保有台数が多い地方や、自動車業界と関係労組に配慮したとみられる。
財政再建の重要性を顧みず、選挙を意識した大衆迎合主義がまたも幅をきかせた形だ。
こんな調子では、反対論の根強い消費税率引き上げを実現できるのか、大きな疑問符が付く。
政府・与党の場当たり的な姿勢は、11年度税制改正に盛り込みながら、野党の反対で成立していない項目の扱いにも表れている。
政府は12年度税制改正大綱で、高所得者を対象にした給与所得控除の縮小、石油石炭税の課税を強化する地球温暖化対策税の導入などを改めて提案した。
内容を変えぬまま再提案したところで、ねじれ国会では、再び否決されるだけではないか。
もともと11年度改正に盛り込まれた増税項目は、法人税の大幅減税で生じる財源不足を穴埋めすることを優先した結果、議論を尽くさず見切り発車したものが多い。仕切り直すのが筋だろう。
民主党政権は、比較的反発の少ない高所得層に税負担を集中させる傾向が強い。公平性を欠くだけでなく、労働意欲や経済活力を失わせる逆効果が懸念される。看過できない問題である。
(2011年12月11日01時10分 読売新聞)
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平成23年度税制改正大綱に関する社説(毎日新聞)
社説:税制改正 もう継ぎはぎは限界だ
時代にそぐわなくなった税制を見直し、本当に支援を必要としている人たちに恩恵が行き渡る仕組みに変える。若い世代が将来に希望を持って働き、安心して子どもを育てられる社会にする--。政権交代を通じて民主党が実現したかったのはそういう改革ではなかったのか。
すったもんだの末に政府の来年度税制改正案がまとまった。だが、目標としていたはずの姿に近づいたとは言い難い。子ども手当は当初の計画を大幅に縮小する一方、法人税率の5%引き下げは財源後回しで貫くなど、企業重視の内容となった。
◇司令塔不在
ちぐはぐさも露呈した。国の役割が重くなる社会保障の強化を唱えながら、民間部門の活力をより重視することを意味する法人税減税を実施する。「大きな政府」に向かおうとしているのか、「小さな政府」を志向しているのか、民主党の目指すものが、よく分からない。
なぜそうなったのか。
税制改正の過程を通じて鮮明になった問題点がいくつかある。まず、意思決定の仕組みを強化することなく、つまり、強い司令塔が不在のまま、調整を各省庁に委ねたことだ。これでは理念上、整合性のとれた税制など期待しようがない。
政府と与党との調整もうまくいかなかった。「政治主導」の鳴り物入りで誕生した政府税制調査会だったが、特定業種などを税制上優遇する租税特別措置や所得税の配偶者控除の縮減といった事実上の増税案は民主党がことごとく反対。結局、減税や優遇税制の継続は政治主導で決め、納税者の負担増となる変更は先送りか最小限にとどめる“逃げ”の姿勢に終始した感が否めない。
株式の配当や譲渡益にかかる税率を時限的に低くしている優遇措置の延長も、抜本的な改革に手を付けることなく惰性で継続を決めたとしか言いようがない。証券投資による所得を特別扱いし、本来20%である税率を10%にする根拠は何なのか。本当に10%とすべきなら、なぜ恒久化せず2年の延長なのか。納得できる説明を求めたい。
税制改正の中には、前進と呼べる部分もある。相続税を増税とする一方で、贈与税について生前贈与の優遇措置対象に孫を加え、より若い世代に所得が移転しやすい仕組みに変えることが代表例に挙げられよう。
23~69歳の被扶養者を持つ世帯主を対象とした成年扶養控除で、対象となるための条件として所得の上限を設置したのも方向性は正しい。働く意欲があるのに職を得ていない被扶養者については、雇用政策で直接、本人を支援し、就労できるよう促すのが筋だからだ。
ただ、低所得者より高所得者に恩恵が偏りがちな控除は廃止し、子ども手当のように直接、給付する制度に切り替えるのは、民主党が政権公約で約束していたことだ。その意味で、配偶者控除の見直しに手を付けられなかったのは、明らかに約束違反であり、来春の統一地方選など選挙を意識した目先の思惑優先と言わざるを得ない。
年度ごとの帳尻合わせがもはや限界にあることが、かつてなく鮮明になった。これまで予算の帳尻合わせに使ってきた埋蔵金は底をつき、もうあてにできない。一方で、間もなく団塊世代がすべて高齢者となり、年金や医療にかかる歳出は加速度的に増加する。消費税の引き上げを含む税の抜本改革は待ったなしだ。
◇危機感の共有を
政府は、来年半ばまでに、改革の具体案を作ることを決めた。国民に求めることになる負担増の規模は、今回の税制改正でもめた増税の比ではない。しかも時間は半年ほどと限られている。配偶者控除に所得制限を設けることすら決められなかった現政権が果たして実行できるのか、疑問だ。
菅直人首相はかつて、財政再建を急がなければ「日本もギリシャのようになる」と強い危機感を訴えていた。消費税引き上げにも直接、言及した。しかし、参院選で大敗して以来、増税の必要性を熱く語る姿を見ることはない。
政府は今後野党にも協議を呼びかけていくというが、まずは首相の主導のもと、政権が危機意識と改革への強い熱意を共有し、結束することが最優先である。さらに欠かせないのは、世論の支持だ。政府・与党としての改革案を作成するのに並行し、国民に財政の現状と先行きを正直に、分かりやすく説明する作業を忍耐強く続ける必要がある。
国と地方を合わせた長期債務の残高が国内総生産の180%に当たるような先進国はほかにない。それにもかかわらず、国債価格が安定しているのは、国内に潤沢な金融資産があることに加え、消費税の引き上げ余地が大きいことがある。しかし、借金が膨らむ一方で金融資産の縮小は続く。増税の余地があるとはいえ、政治に実行する意思がないと市場参加者が判断したらどうなるだろう。
財政破綻危機にみまわれてから実施する対策がいかに激痛を伴うかはギリシャなどの例が示している。そうならないよう、今のうちから英断を下すのが与党、野党にかかわりなく政治家が果たすべき責任だ。
(2010年12月17日)
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平成23年度税制改正大綱に関する社説(朝日新聞)
税制改正大綱―帳尻合わせは限界だ
将来に向けた改革の姿を描けていないため、場当たり感が強い。菅政権がきのう決めた来年度の税制改正大綱は、税制抜本改革の必要性を浮かび上がらせる結果となった。
大綱には、重要な改正が含まれている。12年ぶりの法人減税、所得税や相続税などでの5500億円の増税がその柱だ。個人向けの増税では、所得が比較的多い層の負担増が目立つ。
「とりやすいところを狙った」との批判も噴き出しそうだが、税制のゆがみを手直しするといった側面もあり、そのことは評価できる。
たとえば所得税。給料の一定額を必要経費とみなして課税対象から除く「給与所得控除」を小さくし、年収1500万円超の人を増税の対象とする。これは、高所得者ほど控除額が膨らんで有利になっている現状の是正につながる。
相続税では、税負担の対象にならない「基礎控除」を4割減らし、最高税率も現行50%を55%に引き上げる。
これには経緯がある。バブル時代の地価高騰であまりに相続の負担が膨らみ、その軽減策として基礎控除を広げた。しかしいまや地価はバブル以前の水準だ。このため、相続税を払わないで済む人が増えている。
相続税の課税対象は死亡者100人当たり4人にすぎず、ピーク時の半分というありさまだ。課税対象を広げるのは妥当な判断ではあるまいか。
政府税制調査会が「格差是正」を掲げ、こうして税による所得再分配の機能を生かそうとしているのは良いだろう。しかし、この改正で負担が増えるのは高所得者にとどまらない。
所得税では23~69歳の親族を扶養する人の「成年扶養控除」を廃止し、年収568万円を超える人々が増税対象となった。これは「再分配」だけでは説明できない。
法人税の5%幅引き下げや子ども手当の拡充に必要な「1.7兆円の財源探し」が影を落としている。「帳尻合わせ」の策と見られても仕方ない。
しかもその財源も、なお5千億円ほど不足したまま、見切り発車のような税制改正大綱の決定となった。これは、今回の税制改正の大きな欠陥の表れであるといえよう。
菅政権が消費税の引き上げを含む税制の抜本改革の全体像を描けていないため、財源確保のめどすら立たず、国民が負担を分かち合う構図も見えてこない、ということだ。
税制は国民生活の重要な基盤だ。どんな社会にするために、どのような税制をめざすかがあいまいなままでは、社会保障の将来像も描けない。
その場しのぎでツギハギを重ねる手法は、いよいよ限界に来た。やはり抜本改革と正面から向き合うしかないことは、もはや明らかである。
(2010年12月17日)
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平成23年度税制改正大綱に関する社説(日本経済新聞)
経済と財政の再生に宿題残す税制大綱
菅内閣が2011年度の税制改正大綱を決めた。法人実効税率の5%引き下げを柱に平年度の国税ベースで企業の税負担を5800億円ほど減らす一方、個人は高所得者層を中心に約4900億円の増税となる。
主な税目である法人税と所得税に手をつけたが、経済の活力を高め財政を健全化する目的に照らすと、今回は小手先の手直しにすぎない。消費税増税も含む抜本改革が急務だ。
高所得者を狙い撃ち
今回は民主党政権が一から手掛ける初の税制改正だった。だが、司令塔は不在で、選挙を意識して不人気な策を避け、とりあえず取りやすいところから取る姿勢が目立った。
その典型が所得税だ。民主党は子ども手当の財源として公約にも掲げた配偶者控除の廃止を先送りした。子どものいない夫婦世帯などの反発を招き、来年の統一地方選に響くと懸念する声に押された。「控除から手当へ」を進め、主婦の就業を促す理念はあっさり崩れた。
狙い撃ちされたのは所得の高い層だ。23~69歳の親族を養う納税者の扶養控除は年収568万円超の世帯で原則として縮小・廃止。年収1500万円超のサラリーマンや企業役員の給与所得控除には限度額が設けられ、大幅増税の人も出てくる。
骨太な税制構造の見直しもなく、高所得者だけに負担増を強いるのはおかしい。努力して高い収入を得ようとする意欲をそぎ、外国から優秀な人材を招くにも不利になる。
一方、企業の負担減や市場の活性化に目配りしたのは評価していい。
主要国に比べ高水準の法人実効税率は40.69%から約5%下げ、35.64%とする。中小企業の軽減税率は3%下げて15%に。雇用を10%以上増やした企業への減税も導入する。
租税特別措置の縮小や、減価償却の圧縮といった増収策では足りず、当面は減税が先行するが、単年度の帳尻合わせにこだわらなかったのは妥当だ。減税を企業の投資や雇用の増強へと十分に生かす必要がある。
欧州やアジア諸国との法人税率の開きはなお残る。歳出減や租税特別措置の整理、抜本的な税制改革で、さらに引き下げを進めるべきだ。
株式の譲渡益や配当に対する税率を所得税と住民税の合計で10%と本則の半分にしている証券優遇税制は13年末まで2年延長する。
株価の低迷が続く中、時期尚早の増税で個人の投資意欲を阻害すべきではないから、妥当な決定だ。元本300万円までの株式投資で配当と譲渡益に課税しない少額投資非課税制度の導入は14年1月に延ばす。
来年10月からは石油・石炭税率の段階的な引き上げ分を充てて地球温暖化対策税(環境税)を導入する。二酸化炭素(CO2)排出量を考慮した負担で排出抑制を促せる。温暖化対策や法人減税に生かしたい。
国内便に課税され、日本の航空会社の競争条件を不利にしてきた航空機燃料税は3年間に限り約3割引き下げる。激しい空の競争を勝ち抜くには、これでも力不足だ。他の産業分野でも国際競争を踏まえた税制の見直しをさらに求めたい。
相続税では基礎控除額を4割圧縮し、最高税率も55%に上げる。一方で20歳以上の子や孫に生前贈与する場合は贈与税の累進税率を低めにして、資産を引き継ぎやすくする。
相続税の課税対象になっているのは現在、全体のわずか4%。社会保障費が膨らむなかで、資産を持つ人の相続の際に一定の負担を求めるのはやむを得ない。勤労世代が贈与された分を消費や投資に生かせば経済成長にもプラスに働く。
消費増税から逃げるな
ただし、社会保障改革の前に相続税を増税することには問題もある。年金、医療、公的介護保険などの改革を早く議論し、その中で相続税のあり方も明確にしていくべきだ。
11年度の税制大綱は目先の増収策を寄せ集め、法人税率下げの穴を埋めるのに腐心した構図となった。
中途半端な改革しかできない最大の理由は、民主党政権が消費税率の引き上げという課題を避けたからだ。菅直人首相は夏の参院選前に「10%を参考に」と税率を明言して野党との協議を呼びかけたが、参院選に負けると、すぐに引っ込めた。
増大する社会保障費を賄うために消費税増税は避けられず、所得税や法人税の構造も見直す一体的な税制改革が不可欠だ。政府・与党は来年半ばに改革案を示すというが、負担増を伴う策から逃げ続ける現状を見ると、本気かどうか疑問符が付く。
サラリーマンと自営業者や農家の所得捕捉に差が生じている問題など、課税の不公平感をなくすのも急務だ。番号制の導入も着実に進めていく必要がある。
ねじれ国会のもとで税制法案を与党単独で通すのは難しい。これ以上の経済停滞や財政悪化を食い止める税制改革像を政府・与党が示し、野党の理解を得る努力が欠かせない。
(2010年12月17日)
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平成23年度税制改正大綱に関する社説(読売新聞)
税制改正大綱 消費税抜きで改革はできない(12月17日付・読売社説)
デフレと円高で景気の足取りは重く、先進国最悪の財政赤字がのしかかる。日本経済の成長と財政健全化をどう両立させるか――。
民主党政権に問われた税制改革の基本理念は、それに尽きるだろう。しかし、政府が16日閣議決定した2011年度の税制改正大綱は、そうした要請に十分応えたものとは言い難い。
法人税引き下げや所得税、相続税の控除見直し、地球温暖化対策税の導入など、取り上げられた課題は、いずれも過去の税制論議で難航した重要テーマばかりだ。
にもかかわらず、体系だった議論には至らず、増減税の帳尻を合わせるだけの小手先の改革に終始した。消費税論議が政治的に「封印」された結果、抜本改革の全体像が見えない中で右往左往している印象だけが残った。
◆法人税をさらに下げよ◆
最大の焦点となった法人税は、5%の引き下げで決着した。世界的に割高な法人税の引き下げは企業の国際競争力を高めるうえで不可欠であり、「成長に配慮した税制改正」の象徴でもある。
だが、法人税問題は、5%下げで必要となる1兆5000億円の代替財源をどう工面するかを巡って、最後まで迷走した。
租税特別措置の見直しなど企業側の新たな負担で捻出できるのは6500億円程度にとどまり、下げ幅を3%とする案も出された。最終的に5%下げを指示した菅首相の判断は妥当である。
法人税の実効税率は40・69%から35%強に下がるが、10%台のアジア諸国に比べれば、まだまだ高水準である。
今回の引き下げは第一歩に過ぎない。企業が国際競争を勝ち抜くにはなお不十分だ。将来の税制改革を通じて、もう一段の引き下げを目指すべきだ。
経済界の姿勢も問われる。税負担が軽くなった分を企業がため込むだけで、国内の投資拡大や雇用創出に回さなければ、何のための減税か分からなくなる。せっかくの減税を日本経済の活性化につなげるべきだ。
◆所得課税は広く薄く◆
一方、個人課税は増税項目が並んだ。所得税では、サラリーマンの税負担を軽減する給与所得控除に上限を設定し、成年扶養控除は一定以上の所得がある人は受けられないようにする。相続税も大幅に課税を強化した。
11年度予算編成では、歳出総額が92兆円規模に膨らむのに対し、税収見通しは41兆円程度にとどまる。新規国債の発行額を44・3兆円に抑え込むとしても、10年度に続いて国の借金が税収を上回る異常事態は解消されそうにない。
こうした現状を直視すれば、財政健全化に向けた個人課税の増税路線はある程度やむを得まい。
日本の税制は、先進各国に比べて個人所得課税の割合が低い。景気低迷の影響などもあるが、税負担を軽くする様々な控除が拡大した結果、課税ベースに虫食いのように穴が開いているからだ。
今後も控除の見直し自体は避けて通れないが、問題は民主党政権が「格差是正」の名の下に、高所得層ばかりに負担増を求めていることである。
今回の個人課税強化で捻出できる税収は、国分だけで5000億円程度に過ぎない。主要国に比べ、所得税が課税される最低年収は高く、5~10%の低い税率が適用される納税者数は多い。
今後は、低中所得層を含めて広く薄く負担を求める制度を目指すべきだろう。
その際、必要なのは公平性を確保することだ。収入がガラス張りの給与所得者に比べ、自営業者の所得を把握する難しさが指摘されている。税と社会保障の共通番号制度導入も急がねばならない。
◆政権公約の修正急げ◆
昨年に続き、財源探しに奔走することになった最大の要因は、民主党が政権公約(マニフェスト)にこだわったことにある。
子ども手当や農家の戸別所得補償など、政策効果が薄いばらまき政策を実施するための財源確保を迫られるためだ。それが税制改革を歪(ゆが)める結果を招いている。
税制改革の実現には、政府がまずマニフェストの大胆な修正に踏み切ることが前提となろう。
同時に、民主党の参院選惨敗で後退した消費税議論を本格化することが欠かせまい。
政府・与党は、社会保障改革の財源となる税の具体策を来年半ばまでに作る方針を示した。
社会保障費は現行制度でも毎年1兆円超のペースで膨らみ続ける。その費用は中途半端な税制改正では賄いきれないことを国民の大半が理解している。
このままでは社会保障制度も財政もいずれ破綻することは確実だ。これ以上、消費税問題から逃げることは許されない。
(2010年12月17日01時10分 読売新聞)
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平成22年度税制改正大綱に対する社説-毎日新聞
社説:政権初の税・予算 決定過程に透明さ欠く-平成22年12月23日朝刊
「子ども手当」など来年度予算に盛り込む主要政策について鳩山政権の方針が決まり、税制改正大綱も固まったことで、予算編成は大きな山を越えた。政府予算案が決まらないまま、ずるずる越年するという最悪の事態は避けられる見通しだ。
意見調整が難航した項目の中で最大の焦点の一つになっていたのが、子ども手当への所得制限だった。厳しい財源不足の中、「金持ち世帯まで手当を出すのはおかしい」との声もあり、民主党が受給に所得制限を付けるよう求めたが、最後は鳩山由紀夫首相が、「制限なし」を決めた。
◇「子ども手当」理念守る
親の所得に関係なく、すべての子どもを社会全体で育てる、という民主党マニフェスト(政権公約)の根幹理念を党自ら崩そうとした過程は問題だったが、最終的に政権が守った。正しい決断として評価したい。
これに対し、ガソリンの税率維持を決めたことは、「公約違反」の批判を免れないだろう。鳩山首相は陳謝したが、決定過程や根拠などについて、国民へのていねいな説明が不可欠だ。
しかしながら、マニフェストに、もともと矛盾があったのも事実だ。「地球温暖化対策を強力に推進する」とうたいながら、もう一方では温室効果ガスの排出増加を促しかねないガソリンの暫定税率廃止を盛り込んでいた。
このため私たちは、来年度からの暫定税率廃止を見送ったうえで、環境税については徹底した議論と入念な制度設計を行うよう提案してきた。今回の政府決定は、それにおおむね沿った内容といえよう。鳩山政権には、これを単なる問題の先送りとせず、環境税について国民全体を巻き込んだ議論を主導するよう期待したい。
暫定税率など個々の問題とは別に、政権が果たせなかった大きな約束がある。自民党長期政権を経て築き上げられた既得権益の実態を白日の下にさらし、それにメスを入れ、国民の目に見える意思決定の仕組みを新たに作り上げる、というものだ。
鳩山政権はそのためにいくつかの舞台装置をこしらえた。政府税制調査会はその代表だ。自民党政権時代の不透明な「党主導」の税制改正から脱却しようと党税調を廃止し、意思決定を政府税調に一本化する画期的な構想だ。新生税調のメンバーは、かつてのような有識者ではなくすべて政治家である。大臣、副大臣、政務官ら政府の幹部で構成し、事業仕分けと同様に、議論の過程が国民に見えるよう、全体会合の模様はインターネットで公開した。
しかし、残念な結果に終わった。メンバーはそれぞれ代表する省の主張を訴え、意見がしばしば対立、調整は非公開の場に委ねられた。
税調の発足当初掲げていた高い志も次第に色あせていった。租税特別措置(租特)がその代表例である。企業の研究開発促進や住宅取得の支援など、政策目的のため課税の例外を設けているのが租特だ。大半は減税や非課税措置で、一度導入されると常態化し、税収減は国税だけで7・4兆円にも達していた。
税調は「聖域を設けず見直す」とスタートを切ったが、各省からの要望に押され、「廃止」や「大幅見直し」が次々と「継続」に覆されていった。
◇税調、主役になれず
「事業仕分け」は税金の無駄遣いを省くことで財源の捻出(ねんしゅつ)を狙ったが、効果が疑問視される租特を廃止し、税収増を目指したのが税調だ。4年間で1兆円の確保を目指すものの、今回の成果は差し引きで1000億円規模にとどまった。
その結果、ガソリン税の水準維持に追い込まれたというのが実情だろう。その決定にしても、税調は独自に行うことができず、結局、民主党、特に小沢一郎幹事長の采配(さいはい)を仰いだ。小沢氏が最終局面で「暫定税率の維持」「子ども手当への所得制限」など党の要望を政府に突きつけ、存在感を印象付けたが、「真の主役」であるはずの政府税調が、難題を自ら解決できなかったところに最大の責任がある。猛省が必要だ。
鳩山首相は、政府税調や国家戦略室が本来の役目を果たすには何を改善すべきか、また政府と与党との関係など、これを機にきちんと見直すべきである。
政権が目指している改革はむしろこれからが本番だ。税に関するテーマだけでも、来年以降、議論を詰めて実行に移していかねばならない難題が山ほどある。今回、積み残した環境税や租特の抜本見直しはもちろん、法人税や相続税の改革がある。民主党が訴えてきた所得控除から手当への移行、そのために不可欠な納税者番号制度の導入もそうだ。さらに、消費税の税率引き上げ問題がある。難易度は今回の税制改正や予算編成の比ではない。
暗礁に乗り上げるたびに小沢氏の采配を仰ぐ、というつもりではなかろう。鳩山首相も小沢幹事長も、今回の混乱を教訓とし、国民に納得のいく意思決定の仕組みを再構築してもらいたい。
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平成22年度税制改正大綱に対する社説-朝日新聞
税制大綱―財源なしに公約は通らぬ平成21年12月23日朝刊
政府税制調査会が鳩山政権として初の税制改正大綱を決めた。焦点だったガソリン税などの暫定税率は廃止するが、新たな措置で同規模の税収を維持することになった。
政権公約通りにガソリン税を下げる方針を貫くかに見えた鳩山由紀夫首相は、一転して公約を実現できなくなったことについて「率直におわび申し上げねばならない」と語った。
政権公約の目玉のひとつを変えた以上、その理由を首相は国民にていねいに説明せねばならない。
だが、暫定税率の廃止にはもともと無理があった。廃止すればガソリンは値下がりで需要が増え、首相自身が力を入れる温暖化対策と矛盾する。税収は地方税を含め年2.5兆円も減る。不況で法人税収などが激減するなか、「国債発行は44兆円まで」という予算編成方針は守れない。
本来、民主党が掲げる環境税の導入方針とセットで暫定税率の廃止を打ち出す道もあった。結局、民主党の小沢一郎幹事長からの要望を受け入れる形で事実上の税率維持を決めたことは、政府の政策形成力の弱さを示す事態だといえよう。
そのおかげで来年度予算編成の足場はなんとかできた。だが、迷走劇から浮かび上がった「構造的な財源不足」という大問題に、鳩山政権は全く答えようとしていない。ほんとうに深刻な問題はそこにある。
たとえば、「コンクリートから人へ」の目玉政策である子ども手当を恒久的な制度とするには、2011年度以降、毎年5兆円の支出を支える恒久財源が必要だ。しかし、その財源は確保できていない。
財政事情はますます悪化している。今年度は税収が当初見込みより9兆円少ない37兆円にとどまり、新規国債発行(新たな借金)は53兆円超に膨らむ。税収より借金が多いという終戦直後以来の異常事態だ。
鳩山政権は来年度予算の概算要求額を事業仕分けで圧縮したが、全体の削減額は6800億円にとどまった。政権公約では、「無駄の削減」で数兆円もの財源を生み出せるとしていたが、現実はそれほど甘くない。そのことも、事業仕分けの貴重な教訓として受け止めるべきだ。
毎年度30兆円規模の借金が新たに生じている国の財政事情から見ても、いずれ増税は避けられない。とりわけ有力なのは、法人税や所得税より税収が安定している消費税だ。
消費増税を先送りしてきた自公政権も、社会保障のほころびを直す財源としてその必要性は認めていた。
税収増分を歳出に回せば、増税による景気への影響を相殺できる。世界同時不況を脱却したら実施できるよう、消費増税の検討を進めるべきである。
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◆税理士には秘密を守る義務があります。
税理士法第38条
税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た協密を他に洩らし、又は窃用してはならない。
税理士でなくなつた後においても、また同様とする。
平成22年度税制改正大綱に対する社説-読売新聞
来年度税・予算 政権公約へのこだわり捨てよ(12月23日付・読売社説)
2010年度予算の編成作業が、大詰めを迎えている。
国民生活や企業活動に深くかかわる来年度の税制改正大綱が22日に閣議決定され、子ども手当や農家への戸別所得補償など予算の主要項目の扱いも固まった。
一連の作業に影を落としたのが深刻な税収不足だ。09年度の税収は、当初の見積もりより9兆円余り少ない36・9兆円となる見込みだ。10年度についても同程度の額にとどまりそうだ。
このため、税制改正では、いかに税収を確保していくかが重要なテーマになった。だが、鳩山首相は巨額の予算計上や、大幅な税収減につながる政権公約(マニフェスト)の実現にこだわって決断できなかった。
最後は、小沢幹事長から出された民主党の要望を受け入れる形で大枠を決める迷走ぶりだった。
予算編成でも、同じような過程をたどっている。
10年度予算は、近く政府案が決まる予定だ。乏しい財源で、いかに景気を下支えし、国民生活に安心をもたらす予算を作り上げていくか。鳩山首相は、あと数日で答えを出さねばならない。
税制改正の迷走の象徴が、ガソリン税などの暫定税率だ。鳩山首相は政権公約の目玉として、来年4月の暫定税率廃止に固執したが、最終的には自動車重量税の一部引き下げにとどめた。
◆暫定税率維持は当然◆
国と地方で2・5兆円の税収がなくなれば、財政赤字はさらに膨らむ。この判断は当然だろう。
暫定税率の廃止などについて民主党は、「歳出の無駄の洗い出しで、財源はいくらでも出てくる」と主張していた。だがそれが空手形に終わるのは、最初から分かりきっていたことではないか。
マニフェスト政治の破綻(はたん)を示すものだろう。廃止にこだわった首相の言動は、結果的に国民を欺いたと言わざるを得ない。
首相は、今回の方針転換は「国民の思いに沿ったもの」と述べるなど、責任を自覚していない。転換の経緯を、国民に詳しく説明しなければなるまい。
暫定税率の代わりに導入が検討された環境税については、今後1年程度かけて検討するとした。化石燃料などに幅広く課税する環境税は、産業界や家計に重い負担となる。慎重に扱うべきだ。
政府は、暫定税率の維持で得た税収などで、来年度予算に2兆円の特別枠を設け、雇用対策や地域活性化などに振り向ける方針だ。景気への配慮は妥当であり、使途は景気に即効性がある対策に絞り込むことが肝要だ。
もうひとつの焦点だった子ども手当については、所得制限を設けないことで決着した。中学生以下の子どもを持つすべての家庭に、子ども1人につき月1万3000円が支払われる。
◆子ども手当は見直せ◆
代わりに15歳以下の子どもがいる家庭の所得税の扶養控除が廃止される。高校授業料の無償化の財源として、16~18歳を対象にした特定扶養控除も減額される。
民主党の公約では、子ども手当の支給額は11年度から倍増され、必要な財源はさらに膨らむ。
新たな財源を確保するため、政府は、所得税の配偶者控除の廃止などを検討するという。しかし、子どものいない世帯の反発は必至であり、その程度では足りないこともはっきりしている。
やはり支給額の削減や所得制限の導入などが欠かせない。今後、真剣に検討すべきだ。
たばこ税の大幅引き上げも決まった。代表的な銘柄の小売価格は来年10月から1箱400円になり、政府は1200億円の税収増を期待している。
鳩山内閣は当初、今回の税制改正を、政権交代の成果を示すチャンスととらえていた。
改正作業は、一新された政府税制調査会が原則公開のもとで行うとし、租税特別措置(租特)の大胆な廃止・縮減や所得控除の抜本見直しを掲げてスタートした。
ところが、各論に入ると議論は難航し、租特や所得控除の見直しはなかなか進まなかった。
◆消費税で安定財源を◆
最大の問題は、社会保障費の財源確保に向けた手だてに踏み込まなかったことだ。
毎年1兆円規模で増え続ける社会保障費を賄うには、安定した財源が必要で、それには消費税しかないことは明白である。
欧州各国は、子ども手当に相当する子育て支援策を導入済みで、所得制限は設けていない。だが、各国の付加価値税(消費税)の税率は2けたを超えている。
消費税率の引き上げを封印していることこそ、政策実現の最大の障害といえよう。鳩山内閣は景気回復後、直ちに引き上げられるよう、議論を急ぐべきだ。
(2009年12月23日01時47分 読売新聞)
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◆税理士の倫理
税理士は脱税相談に応ずることができません。また、依頼者が租税に関して不正な行為がある場合には、是正をするよう助言しなければならないことになっています。
納税者の信頼に応えるため、税理士は、業務に関して知り得た秘密を守る義務があり、安心して依頼することができます。使用人についても同様の義務があります。
税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為も禁じられ、税理士業務に関して帳簿を作成し、使用人等に対する監督義務もあります。
平成22年度税制改正大綱に対する社説-日本経済新聞
社説 活力と規律の展望見えぬ鳩山税制大綱(12/23)
鳩山内閣が政権交代後で初めての2010年度税制改正大綱を決めた。既得権益の一掃を旗印に、政治主導の税制を目指したが、結果的には「枝葉」の制度改正にとどまった。日本経済の活力を高め、財政を安定させるような税制改革の全体像を描き直すべきだ。
税制は国の骨格を左右する。民主党は自民党税制調査会のような特定業界との結びつきを排し、新しい政府税制調査会で政治主導の透明な意思決定を目指した。基本的な方向は正しく、評価できる内容もあるが、骨太な税制改革とは言い難い。
財源確保の思惑が優先
10年度改正に盛り込んだ措置は国・地方の合計で差し引き約1兆円の増税(平年度ベース)となる。
民主党が衆院選で公約した給付策の財源を確保する思惑が目立つ。所得税などの控除の見直しでは子ども手当導入と引き換えに、11年分の所得税と12年度分の住民税から、15歳以下の子がいる世帯への扶養控除を廃止する。高校無償化に伴い16~18歳分の特定扶養控除も圧縮する。
控除が減れば課税対象の所得が増えるので税負担は増すが、より高い税率を適用する高所得層ほど重い負担になる。給付する手当は同額なので、低所得層に手厚い措置となる。格差是正の面では有効だが、配偶者控除の議論を先送りするなど、課題を積み残した。
民主党が廃止を公約していたガソリン税の暫定税率は新たな制度に衣替えして現行の税率を維持する。
09年度の国税収入は予算額より9兆円も下振れして37兆円弱にとどまり、10年度も不振が続く。国・地方で2.5兆円の減収につながる暫定税率の廃止は財政と地球温暖化防止の両面から不適切で、判断は妥当だ。一方で、大綱は地球温暖化対策税の11年度実施を目指すと明記した。着実な温暖化防止の財源確保へ、有効で公平な制度を詰めてほしい。
企業向け税制では期間を区切った政策減税である租税特別措置の一部を整理した。中小企業向けの法人税率引き下げも見返りの財源がないとの理由で見送った。一方で研究開発減税や中小企業向けの投資促進税制は維持した。
不透明な税制の整理は大切だが、景気への配慮も必要だ。中小企業の税率引き下げも投資を促す措置として有効だったのではないか。
住宅資金に対する贈与税の非課税枠を拡大する措置や、少額株式投資に対する配当や譲渡所得への非課税措置も盛り込んだ。住宅投資や株式市場の活性化へ効果が見込める。
健康維持の観点で、欧米に比べて低水準だったたばこ税を上げるのは評価できる。たばこ価格は来年10月から1本当たり5円程度上がり、標準的な20本入り1箱は400円程度になる。たばこ事業法の見直しや葉タバコ農家対策なども念頭に、なお適正な課税を探るべきだ。
個々の項目の詰めは進んだが、大綱は枝葉を整えただけである。太い幹となる中長期の税制改革では、説得力のある理念を示せていない。
日本経済を支える企業の活動をどう後押しし、活力をどう高めるか。財政規律を取り戻し、膨らむ社会保障費をどうまかなっていくか。こうした点に留意して、新たな税制の青写真を示すことが、企業や個人の投資や消費を促す上で重要である。
税制大綱は中長期の税制改革について一応の姿を示したが、目指すべきは、スピード感のある一貫した税制の再設計だ。その点で、大綱の内容はまだまだ力不足である。
番号制の導入を早めよ
まず、税制の抜本改革に不可欠な納税者番号の導入を急ぐべきだ。1年以内に、社会保障と税の共通の番号制度導入に関する結論を出すというが、実現はかなり先となる。個人情報保護の問題など数多くの懸案はあるが、実現の時期を極力早めるよう努力してほしい。
個人の納税情報をつかむ番号制は減税と低所得者への給付を組み合わせた「給付つき税額控除」の導入に不可欠だ。給付と負担を個人ごとに明示する社会保障勘定や、年金制度を一元化する際の前提にもなる。
中国やインドの台頭で激化する国際競争力への目配りも重要だ。日本は国・地方合計の法人実効税率が約40%と突出して高い。日本企業に国内で投資や事業を進めてもらうには、法人税率の引き下げが急務だ。
消費税率の引き上げについて「4年間は凍結する」という与党方針を単に追認したのも疑問がある。
少子高齢化で社会保障費の膨張は止まらず、税収不振で財政赤字が一段と深刻になっている。増税の先送りだけでは将来に対して無責任だ。財政規律をどう確保するのか、金融市場も疑念を深めかねない。
今回の税制改正作業はわずか2カ月余りの短期決戦だった。政府税調は日本の将来を見据え、税制の全体像を改めて入念に詰めてほしい。
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◆税理士の業務
税理士は、他人の求めに応じ、以下の業務を行います。
(1)税務代理
(2)税務書類の作成
(3)税務相談
(4)会計業務
(5)租税に関する訴訟の補佐人
この税務代理、税務書類の作成、税務相談の業務は、有償、無償を問わず、税理士でなければできません。
また、税理士でない者は、「税理士」「税理士事務所」又はこれらに類似する名称を用いてはならないことになっています。
政府税調平成19年度税制改正答申2-3 -税理士 名古屋/名古屋市の税理士事務所
3.国民生活に関連する税制
(1)金融所得課税
①金融所得課税の一体化
少子・高齢化の進展を背景として貯蓄率が低下する中、個人の金融資産の効率的な活用が、今後の経済活性化のための鍵となる。このため、近年、「貯蓄から投資へ」の政策的要請を受け、個人の金融商品選択における課税の中立性を確保し、簡素でわかりやすい税制となるよう、分離課税制度を基本として、金融所得課税の一体化に向けた様々な措置が講じられてきた。株式等の配当や譲渡益は、このような考え方から原則20%の税率による実質分離課税とされている。
今後とも、金融所得間の課税方式の均衡化、損益通算の範囲の拡大を柱とする金融所得課税の一体化を進めていくべきである。
②上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率
上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率(10%)は、平成15年度税制改正において、当時の株式市場の低迷や金融機関の不良債権問題に対応するため、5年間の時限措置として導入されたものである。
現在の経済状況は、株式市場が活性化し、不良債権問題も正常化するなど、優遇措置導入当時と比べて大幅に改善している。また、金融技術の発達により金融商品からのキャッシュフローを様々な所得分類に加工することが可能となっている中で、課税の中立性確保のため、金融所得間の課税方式の均衡化が要請されている。さらに、株式等の保有状況を考慮しつつ、公平性の観点にも留意する必要がある。
これらを踏まえ、平成19年(度)末に期限切れとなる上場株式等の配当や譲渡益の優遇措置については、金融所得課税の一体化の方向に沿って、期限到来とともに廃止し、簡素でわかりやすい制度とすべきである。
なお、上場株式等の配当や譲渡益に係る時限的な優遇措置の見直しによって金融所得間の税率を揃えるとともに、今後、金融所得課税の一体化を進めていくにあたって、次の点に留意すべきである。
第一に、「貯蓄から投資へ」の流れを確かなものとするべく、資金の流れに引き続き十分注意を払い続ける必要がある。また、この優遇措置の廃止が株式市場の無用の変動要因とならないよう工夫する必要がある。
第二に、個人投資家の投資リスクを軽減し、リスク資産への投資促進を図るため、金融所得の損益通算の範囲を本格的に拡大していくべきである。その具体的な範囲や仕組みについて、今後、早急に検討を進める。
第三に、配当所得については、事業参加性のある所得としての性格も有することから、総合課税を選択した場合には法人税との調整措置が適用されているが、今後、法人段階と個人段階での課税の調整の在り方についてさらに議論を進めていく。
(2)円滑・適正な納税のための環境整備
税制に対する国民の信頼を確保するためには、制度の公平・公正性、中立性、簡素性、さらには予測可能性が重要である。税務執行面についても、納税者の利便性の向上、負担の軽減の観点から、その在り方を適時見直し、改善すべきである。同時に、脱税や租税回避を防止するため、必要に応じ、適切な資料の提出を求めるなど適正な納税を確保するための措置を講ずる必要がある。
前述の金融所得課税の一体化にあたっては、源泉徴収制度、資料情報制度、金融番号制度等、適正な執行と納税者利便の向上を図るための納税環境の整備について議論を深めるとともに、すでに多数の投資家が利用している特定口座を活用した損益通算の在り方についても検討すべきである。
納税者全体の利便性の向上の観点から、国税におけるコンビニ納付を可能とすべきである。また、電子申告について、手続の簡素化等、その普及のための方策を検討すべきである。税務当局が差し押さえた動産等を売却する公売については、売却手続の円滑化の観点から見直しを行うべきである。
適正な納税のための環境整備として、源泉徴収、支払調書の提出の対象となる報酬の範囲を見直すとともに、投資ファンドから分配される損益に関する資料情報制度を改善すべきである。
納税者番号制度は、各種資料の名寄せ・突合を効率化することにより、税務行政の効率化・高度化、ひいては適正・公平な課税に資するものである。今後、住民票コードや基礎年金番号、いわゆる「社会保障番号」の活用可能性を検討しつつ、これまで以上に積極的な取組が必要である。
また、公的年金受給者の納税の利便性を向上させるとともに、市町村における徴収事務の効率化を図る観点から、所得税や介護保険料と同様に個人住民税についても、公的年金からの特別徴収(天引き)を速やかに実施すべきである。
なお、国・地方の三位一体改革の一環として、平成19年に所得税から個人住民税へ税源が移譲される。この税源移譲により、1年間の所得に対する所得税と個人住民税を合わせた税負担額は基本的に変わらない。しかし、所得税と個人住民税の課税・徴収方式の違いから、多くの納税者は、平成19年1月から所得税が減り、同年6月から減少相当分だけ個人住民税が増えることになる。そうした変動について負担増と誤解されないよう、国民の十分な理解を得るために国・地方が一体となって積極的な周知を図るべきである。
(3)個人住民税
個人住民税は、「地域社会の会費」として住民がその能力に応じ広く負担を分かちあうという性格を有している。3兆円の税源移譲の実現に伴い所得割が10%比例税率化され、応益性がより明確になることを踏まえ、その在り方を考えていく必要がある。
現行の均等割の税率は、1人当たりの国民所得等の伸び等を勘案するとなお低い水準にとどまっている。個人の税負担の動向にも十分考慮を払いつつ、税率の引上げを検討すべきである。
また、所得割の諸控除については、「地域社会の会費」としての個人住民税の性格を踏まえて整理合理化を図り、課税ベースの拡大に努めていく必要がある。こうした観点から、特に政策誘導的な控除については、所得割が比例税率化されること等も勘案し、控除額の水準等その在り方について速やかに見直すべきである。
(4)道路特定財源
揮発油税、自動車重量税等の道路特定財源については、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号)において、その見直しの基本方針が定められているところであり、この方針に沿って、現行の税率水準を維持し、納税者の理解を得つつ、一般財源化を図るべく、年内に具体案を取りまとめるべきである。
(5)地球温暖化問題への対応
環境税については、国・地方の温暖化対策全体の中での環境税の具体的な位置付け、その効果、国民経済や国際競争力に与える影響、諸外国における取組状況、既存エネルギー関係諸税との関係等を十分に踏まえ、総合的に検討していく。
以上、当調査会は、11月7日の安倍内閣総理大臣からの諮問を踏まえ、「成長なくして財政再建なし」との理念の下、経済活性化と税制を中心に活発かつ精力的な審議を行い、平成19年度税制改正に関する答申を取りまとめた。今後、経済活性化の果実が広く国民各層に浸透し社会全体を豊かにしていく効果等について調査・分析するとともに、今回の年度答申において議論を尽くせなかった諸課題についても、国民に分かりやすい形で審議を進めていくこととする。政府においては、平成19年度税制改正にあたって、この答申に盛り込んだ意見を指針として確実に実施することを期待する。
政府税調平成19年度税制改正答申2-2 -税理士 名古屋/名古屋市の税理士事務所
2.新しい制度改革に対する税制上の対応
(1)三角合併の解禁への対応
グローバル化が進み、経済環境の変化に迅速かつ柔軟に対応した企業経営を行うことが経済活性化の観点から必要との考え方の下、会社法の施行により来年5月から三角合併が可能となり企業組織再編のための選択肢が拡大される。これに伴い、税制においても、適切な対応が求められている。
我が国の組織再編税制は、企業グループ内の組織再編成や、共同事業を営むための組織再編成の場合に、同一の当事者が事業を継続する実態があると見て、譲渡損益の課税を繰り延べる考え方を取ってきており、三角合併についても、同様の考え方で対応すべきである。また、三角合併により新たにクロスボーダーの組織再編が可能となるが、これについては内外無差別を原則とすべきである。あわせて、事業譲渡類似等の我が国で課税できる非居住者・外国法人株主の得る譲渡益について、課税を繰り延べる結果、我が国の課税権が及ばなくなってしまう問題や、タックス・ヘイブンにある実体の無い会社を利用した三角合併により、租税回避を容易にする組織形態を作り出せるという問題への対応を検討すべきである。
(2)信託制度の抜本見直しへの対応
社会・経済活動の多様化に対応し、経済主体の選択肢を拡大する観点から、信託制度の抜本見直しを内容とする信託法の改正が行われる。これにより、信託に対する様々なニーズに対応して新たな信託が認められるなど、信託の利用形態が大幅に多様化することとなる。
例えば、事業を行うための1つのツールとしても信託を活用することが可能になることにより、我が国経済における事業形態の多様化がさらに進み、経済活性化にも資すると期待される。
この他にも、新たな信託法の下で、今後、様々な信託の利用ニーズが登場してくるものと考えられる。
例えば、公益的な性格を持つ目的信託等については、今後、公益信託制度の見直しが予定されていることも踏まえ、信託のこうした利用実態に対応した税制上の検討を進めていくべきものと考えられる。
信託制度が多様なニーズに応えて発展し、適正な規律の下で有効に活用されることが重要である。一方で、新たな制度を利用した租税回避の懸念が指摘されている。こうしたことを踏まえれば、まずは、現行税制の考え方を基本とした上で、必要な場合に信託段階課税を行うなど、課税の中立性・公平性を確保するため適切な措置を講ずべきである。
(3)リース会計見直しへの対応
リース会計については、取引の経済的実態をより反映させる観点から会計基準の変更が予定されている。リースの税制上の取扱いについては、納税者の事務負担軽減にも配慮し、会計基準の変更を踏まえ、取引の経済的実態を適切に反映させるよう措置すべきである。
政府税調平成19年度税制改正答申2-1 -税理士 名古屋/名古屋市の税理士事務所
Ⅱ総合的な税制改革の流れの中での平成19年度税制改正
平成19年度税制改正については、今後議論を深めていく総合的な税制改革の全体像との整合性を考慮しながら、早急な見直しを必要とする以下の主要な事項について検討を行った。
(1)経済活性化の観点からの減価償却制度や留保金課税制度の在り方
(2)経済主体の選択肢を拡大する方向での会社法や信託法等における制度改革に対する税制面の対応
(3)国民に身近で関心の高い税制上の措置である金融所得課税の在り方や、納税者利便の向上や適正納税を確保するための施策
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1.経済活性化に向けた速やかな対応
(1)減価償却制度
減価償却制度は、償却資産の使用期間にわたって費用と収益を対応させるものであるが、国際的な競争条件を揃え、競争上のハンディキャップをなくすことが重要である。このため、主要国では設けられておらず、合理的な説明が困難な償却可能限度額(取得価額の95%)については、これを撤廃すべきである。
また、設備投資を促進し、生産手段の新陳代謝を加速する観点から、新規取得資産について法定耐用年数内に取得価額全額を償却できるよう制度を見直し、残存価額(10%)を廃止するとともに、償却率についても国際的に遜色のない水準に設定すべきである。
法定耐用年数・設備区分については、使用実態を十分把握した上で、簡素化等の見直しをしていく必要がある。特に、技術革新のスピードが早く、実態としても使用年数の短いものについては、早急に法定耐用年数を短縮すべきである。
なお、固定資産税における償却資産については、資産課税として、課税対象の資産価値を評価するために減価を行っているものであり、法人税の減価償却とは趣旨が異なる。今後、その評価方法については、税の性格を踏まえ、検討していく必要がある。
(2)同族会社の留保金課税
同族会社には、税制上特別の措置が講じられている。これは、少数の株主の支配の下で、家族への報酬・給与の支払い等による所得分割や恣意的な配当の繰延べ等が行われるおそれがあることを考慮した仕組みである。留保金課税制度もこうした一環として位置付けられる。
平成18年度税制改正においては、それまでに行われた法人税率と所得税率の改正や企業の実態を踏まえて留保金課税制度の抜本的見直しが行われた。しかしながら、依然として、同制度に対しては企業の財務基盤の強化を阻害する面が残っているとの指摘がある。一方で、経済活性化の観点から、資金調達面での制約を受ける中小企業の資本蓄積を促進していくことが重要になっており、さらに、ベンチャー等の技術革新を支援し、競争力強化を図るといった政策的要請がある。以上を踏まえ、留保金課税制度のさらなる見直しを検討すべきである。
(3)エンジェル税制
我が国の将来を支える産業を生み育てるため、ベンチャー企業への資金供給を促進していくことが重要である。こうした観点から、エンジェル税制について、対象となるベンチャー企業の範囲を広げるなど、より使いやすくする方策を検討する必要がある。
(4)事業承継関連税制
中小事業者の事業承継に関する相続税の特例措置については、拡充すべきとの意見がある一方で、経済活力の維持への有効性といった観点から再検討する必要があるとの指摘もある。また、一般的に相続税の負担が低下している中で格差の拡大を招くおそれがあるとの指摘もある。
こうした議論を受け、今後、中小事業者における事業承継の実態を把握し、課税の公平性に留意して、経済活力の維持を図るとの観点も踏まえ、事業活動の継続に対する支援の基本的な在り方についてさらに検討していく。他方で、会社法の施行により発行が容易になった株主総会での議決権がない株式等の種類株式に係る評価の明確化といった当面講ずべき措置については適切に対応する。
(5)国際課税
海外との経済交流を促進するためのインフラとして、各国の税制の間を橋渡しする租税条約ネットワークの果たす役割は大きく、引き続きその拡充に努めるべきである。
移転価格税制は、国際的な取引が関連者間で行われる際に、取引相手国との協議を通じた調整を含め、両国における適切な課税を確保するための制度である。近年、企業活動の国際化の進展を背景に、課税件数・金額が増加しており、国際的な二重課税による企業負担の問題が指摘されている。本税制については、グローバルに活動する企業の予測可能性を一層高める環境を整備するため、適用基準の明確化を引き続き推進するとともに、手続の改善や相互協議体制の強化を進めて事前確認制度の迅速化を図るべきである。さらに、移転価格税制の特質にかんがみ、二国間の協議で合意が得られるまでの間、二重課税に伴う負担を軽減するため、納税を猶予する制度を導入すべきである。
また、常に変化するグローバルな経済環境の中での企業の活動実態を踏まえ、公平な経済活動の環境を提供する必要がある。このため、外国子会社合算税制について、合算対象子会社の範囲を見直すなどの適切な対応を講ずべきである。
(6)外形標準課税
法人事業税の外形標準課税は、税負担の公平性の確保、応益課税としての税の性格の明確化、地方分権を支える基幹税の安定化、経済の活性化等の観点から、平成15年度税制改正において導入されたところである。しかし、資本金を減少することで、外形標準課税の対象外となる事例が生じている。今後、減資の状況等を踏まえつつ、税負担の公平性を確保する観点から、対象法人の見直しが課題となる。
外形標準課税は、多数の法人が法人事業税を負担していないという状況の是正を図るとともに、法人所得に対する税負担を軽減する一方、付加価値等に対して課税するものであり、今後、応益性の観点から、その定着に努めていくべきである。
(7)政策税制の集中・重点化
政策税制については、PDCA(計画・実施・評価・改善)サイクルの確立が不可欠であり、経済活性化等にとって真に有効な分野への集中・重点化を一層徹底する必要がある。このような観点から、平成15年度に導入された研究開発税制は高く評価できる。一方で、役割を終えた既存の租税特別措置等については、引き続き整理合理化を進めることが重要である。
事業税における社会保険診療報酬の実質的非課税措置については、累次の答申でも指摘してきたところであり、税負担の公平を図る観点から、速やかに撤廃すべきである。また、自由診療に係る医療法人の所得に対する軽減税率についても、確実に見直しを行うべきである。
政府税調平成19年度税制改正答申1-税理士 名古屋/名古屋市の税理士
Ⅰ税制調査会の使命-総合的な税制改革に向けての視点と審議の進め方
(1)当調査会は、本年11月に安倍内閣総理大臣から以下の諮問を受けた。
「歳出・歳入の一体改革を進めていくにあたっては、「成長なくして財政再建なし」の理念の下、イノベーションの力とオープンな姿勢により日本経済に新たな活力を取り入れ、経済成長を維持していくことが重要である。こうした取組みの下、国民負担の最小化を第一の目標に、歳出削減を徹底する必要がある。
税制については、我が国の21世紀における社会経済構造の変化に対応して、各税目が果たすべき役割を見据えた税体系全体のあり方について検討を行い、中長期的視点からの総合的な税制改革を推進していくことが求められている。
こうした税制改革の中では、喫緊の課題として、我が国経済の国際競争力を強化し、その活性化に資するとともに、歳出削減を徹底して実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対する安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにしなければならない。また、子育て支援策等の充実、地方分権の推進といった政策目的にも応えなければならない。
こうした税制改革の検討にあたっては、税制が経済や財政にどのように関わるかというマクロ的な視点、税制が企業や家計にどのように関わるかというミクロ的な視点に立った分析が必要である。
以上の基本的な考え方の下、あるべき税制のあり方について審議を求める。 」
(2)当調査会は、この諮問を受けて、国民各層が豊かになる税制改革を目指し、次のような基本的な視点に立って議論を進めていく。
経済成長は財政健全化の牽引力になるという認識の下、少子高齢化、グローバル化がさらに進む21世紀半ばの我が国経済社会を見据えつつ、「成長力強化」、「財政健全化」、「健全で安心できる社会の実現」という相互に関連する目標の実現に向けた改革が、一体的に取り組まれるべきである。また、改革にあたっては、真の社会的弱者への配慮や格差を固定させない取組も必要である。
一方、極めて厳しい財政状況の中で、将来世代への負担の先送りを行わないよう、財政健全化にも正面から取り組まなければならない。こうした取組は、資金の流れを官から民へとシフトさせ、経済活性化につながるものである。このため、政府の掲げる歳出・歳入一体改革をしっかりと実行していかなければならない。自然増収がある場合にも財政規律を堅持する必要がある。平成19年度予算においては、今後5年間の歳出改革の初年度として、国・地方ともに聖域を設けることなく徹底した歳出削減を行うべきである。
税制については、中長期的な視点からの総合的な税制改革に向け、社会経済構造の変化に対応した各税目の在り方を検討していく。その中で、経済活性化、社会保障等の安定的な財源の確保、子育て支援策等の充実、地方分権の推進といった政策課題にも応えていかなければならない。
(3)当調査会は、まず経済活性化と税制について議論を行った。
経済活性化に向けた税制の検討にあたっては、財政健全化との両立という視点や公平・中立・簡素の租税原則を踏まえ、国際的な競争条件を揃え、イノベーションを加速し、オープンな姿勢をとることが重要である。
このような観点からの今後の検討課題の一つとして、法人実効税率引下げの問題が提起された。企業部門の活性化はその付加価値の分配を通じて家計部門に波及し、プラスの効果をもたらす。法人実効税率の問題の検討にあたっては、課税ベースも合わせた実質的な企業の税負担の国際比較、さらに企業部門の活性化が雇用や個人の所得環境に及ぼす影響等についての調査・分析を深める。また、税だけでなく社会保険料を含む企業の種々の負担の国際比較を行う。
イノベーションの加速という点からは、研究開発税制をはじめとする政策税制の評価を行うとともに、我が国の将来の基幹産業を生み育てるため、単なるマネーゲームにとどまらないリスクマネーの有効な活用方策の検討が課題である。また、企業の成長のための多様な資金調達の手段に税制がどのように影響を及ぼすのか、今後しっかりと検討していく。
オープンな姿勢という点からは、海外との経済交流を促進することが重要であり、投資や技術の受け入れ国における課税を相互に軽減する租税条約ネットワークのさらなる拡充等に取り組むべきである。
(4)今後の審議にあたっては、各委員の専門分野の研究蓄積も生かし、ミクロ・マクロの両面から、税制と経済、財政、企業、家計との関わりを調査・分析するとともに、個別税目だけではなく、税制全体、さらには社会保障制度をはじめとする諸制度とも関係付けた有機的な議論を行うことが重要である。そうした調査・分析、議論を基礎に、総合的な税制改革のグランドデザインを国民に分かりやすく示していく。また、政策論議の透明性を高め、国民に対する説明責任を果たす観点から、広報・広聴の果たす役割を重視し、情報発信の強化と合わせて広く国民各層・各分野の声を聴いていきたい。
政府税調平成19年度税制改正答申-税理士 名古屋/名古屋市の税理士事務所
平成19年度の税制改正に関する答申 (政府税制調査会)平成18年12月1日確認
平成19年度の税制改正に関する答申
-経済活性化を目指して-
Ⅰ 税制調査会の使命-総合的な税制改革に向けての視点と審議の進め方
Ⅱ 総合的な税制改革の流れの中での平成19年度税制改正
1.経済活性化に向けた速やかな対応
2.新しい制度改革に対する税制上の対応
3.国民生活に関連する税制
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(秘密を守る義務)
税理士法第38条
税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た協密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。