社説:減税だけで不安は消えぬ(2008/12/13)
ずらりと減税策が並んでいるのに、将来への不安は消えない。増え続ける社会保障を支える安定財源が、一向に見えてこないからだ。
自民、公明両党がまとめた来年度の与党税制改正大綱は、過去最大の住宅ローン減税をはじめ、低公害車の自動車税の軽減、中小企業の法人税率引き下げなど減税策が目白押しだ。
耐震工事などを施した「長期優良住宅」を新築した場合、10年で最大600万円も所得・住民税が安くなる。ハイブリッド車の自動車重量税と取得税はゼロになる。市場活性化には効果があろう。
消費減退や雇用不安が広がり、国内景気は冷え込む一方だ。景気てこ入れを最優先し、内需波及効果が大きい住宅や自動車などの需要を刺激する狙いは分かる。
だが、もう一つの焦点だった消費税率の引き上げは、あまりに及び腰と言わざるを得ない。
大綱は、「消費税の全額を年金・医療・介護の社会保障給付と少子化対策に充てる」と明記し、消費税を社会保障目的税化する方針を打ち出した。
ところが、肝心の消費税率の引き上げ時期は、「2010年代半ばまでに持続可能な財政構造を確立する」と、あいまいなままだ。引き上げ幅については、どこにも触れられていない。
景気が回復してから準備を始めたのでは遅すぎる。事前に周到な準備をしなければ、とても速やかな引き上げはできまい。
麻生首相は、3年後の消費税率引き上げを明示するよう指示し、自民党税調もその方向だった。しかし、選挙への影響を懸念した公明党の反発などから、時期を明らかにすることはできなかった。
来年度の社会保障費の不足分を補うため、首相が求めていた「たばこ税の引き上げ」も見送られた。将来の安定財源どころか、来年度に必要なつなぎ財源すら手当てできていない。指導力の低下は目を覆わんばかりだ。
こんな状況では、本当に景気を「全治3年」で回復できるのかどうかも、心もとない。将来の生活不安が消えないうちは、いくら減税を叫んでも、国民の財布のヒモは緩まないだろう。
税制改正大綱を踏まえて、政府・与党は、中期的な税制抜本改革の道筋を示す「中期プログラム」を近くまとめる方針だ。
首相にとって、まだ巻き返すチャンスはある。より踏み込んで、消費税率引き上げの工程を明確に示すべきである。
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