2008年度与党税制大綱に対する社説-朝日新聞

証券優遇税制―すっきりと撤廃を(朝日新聞2007/12/14朝刊)

 与党が08年度の税制改正案を決めた。焦点の証券税制では、税率の軽減策を一部分に限定して2年間残すことにした。この案は問題が多く、納得できない。

 投資信託や上場している株式は、配当にも売却益にも、一律20%の税金がかかるのが本来の姿である。しかし、03年から半分の10%へ軽減されてきた。

 03年当時は、日経平均株価が4月28日に7607円のバブル後最安値をつけ、底の見えない市場の混乱が続いていた。このため、市場てこ入れの緊急避難として一時的に軽減したものだ。

 株価はその後大きく盛り返し、2倍以上の水準まで戻った。景気も低水準ながら息の長い回復が続いている。緊急避難の軽減策を残す環境ではない。

 とくに軽減策には、利子課税とのバランスの面で問題が多い。

 預貯金・国債の利子や、貯蓄性保険の利子相当分など、金融商品からの利益には、一律20%の税金がかかっている。これと同種の配当や証券売却益への税金だけ、異常時でもないのにその半分に優遇しておくのは説明がつかない。

 これらの金融証券所得は、所得が多くても少なくても税率は一律だ。給与など所得が多いほど税率が高くなる他の所得からは分離され、別扱いされている。

 国税庁の調査では、所得5000万円超の層が納めた所得税は所得の21.8%だったのに、3000万~5000万円の層は22.7%。下の層の方が税負担は重かった。

 負担率の逆転が生じた一因は、分離課税で税率が低い金融証券所得を、富裕層の方がたくさん得ていることにあるとみられる。証券優遇税制が豊かな層へ利益をより多くもたらし、税負担の公平をゆがめているのは疑いない。

 優遇存続を求める側の理由は「貯蓄から投資へ」の流れを促すというものだ。個人金融資産に占める株などの比率が米国やドイツなどに比べて低く、なお優遇措置が必要だという。

 優遇を始めた03年以降、年収400万~500万円の中堅所得層で、株や投資信託保有の伸び率が高かったことから、「新たな投資層を拡大する役割も果たした」と主張している。だが逆に、投資への誘導役を終えたともいえる。

 与党は今回、社会保障の財源として消費税を引き上げていく方向も打ち出している。しかしいま、公平をゆがめる税率軽減をしてまで投資への誘導を続ける必要があるとは思えない。

 与党案では、売却益は年500万円以下、配当は年100万円以下に対して軽減を2年間残す。だが、金融証券所得を漏れなく合算する仕組みがまだないのに、どうやって上限以下かどうかを見分けるのか。税制を複雑にするだけだ。

 衆参の多数派がねじれたことで、与党案が通るかどうかは国会論戦に委ねられる。民主党は配当については優遇を存続、売却益は撤廃を求めている。与野党とも再検討したうえで議論してほしい。

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