2008年度与党税制大綱に対する社説-日本経済新聞

社説 抜本改革を避けた小粒の与党税制大綱(日本経済新聞2007/12/14朝刊)


 自民党と公明党が2008年度の与党税制改正大綱を決めた。厳しい財政事情も映して数十億円の減税にとどまり、国会での法案成立が困難な消費税の抜本改革などは軒並み先送りされた。小粒の改正ばかりで、経済の活性化にも財政再建にも不十分な内容と言わざるを得ない。

 税制改正の最大の特徴は不透明な政治状況だった。7月の参院選後に与野党が衆参両院で過半数を分け合い、与党大綱の決定が粛々と税法として通る例年の展開は望めない。参院第一党の民主党も税制大綱を出し来年の通常国会で対決する構えだ。

 消費税など手つかず

 09年度に基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げることもあり、08年度改正はこの「安定的な財源」として消費税率の引き上げが焦点と考えられた。

 保険料未納が深刻化する年金制度について、自民党内では全額税方式への移行も選択肢にのぼった。自民党の財政改革研究会では増大する社会保障費をまかなうための早期の消費税増税を求める意見も多かった。

 ところが与党税調は「次の衆院選で不利になる」と増税の具体化を封印し、大綱で消費税を「社会保障費用をまかなう主要財源」と記すにとどめた。民主党は消費税を現行税率5%のまま全額を「最低保障年金」に充てるという立場のままだ。

 「選挙対策」で消費税が動かず、法人、所得税など他の抜本改革も進まなかった。大綱が小粒の寄せ集めに終わったのはその影響が大きい。

 来年度改正の焦点の一つ、証券税制では、08年度末までに期限を迎える上場株式の譲渡益、配当への10%の軽減税率(本則は20%)を2年延長する。ただ軽減は譲渡益が500万円以下、配当が100万円以下だけで、残りは本則の20%となる。

 09年から株譲渡の損失と配当収益を相殺できる損益通算を認めるが当初は確定申告が必要だ。10年からは証券会社などの源泉徴収ありの特定口座を通じて譲渡益と配当を損益通算できるようにする。

 1500兆円の個人金融資産をリスクを伴う投資に向けるには、より幅広い金融商品間で損益通算ができる金融一体課税の導入が欠かせない。その道筋が明示されず、当面の煩雑さも消えないことには不満が残る。

 経済活性化への配慮から、企業の研究開発費用について法人税などから税額控除できる範囲を2割から最大3割に広げる。また自動車などの製造設備の耐用年数を短縮し、購入直後に多めの減価償却をして税負担を減らせるようにした。省エネ住宅への税優遇なども入った。

 いずれも効果は否定しないが、力不足である。今後10年、20年で日本の産業構造は様変わりする。グローバル経済の中で税制も変わらねばならない。特定業種に恩恵が及ぶ租税特別措置を極力整理し、課税所得の範囲を広げて、国際的な潮流である法人課税の実効税率引き下げにつなげることが重要だ。所得税も配偶者控除などの人的控除を整理する一方、低所得者向けの税額控除や給付を積極的に検討すべきだろう。

 中小企業経営者が子や孫に事業を託す際の事業承継税制では、非上場株の課税価格を現行の1割まででなく8割まで減額できるようにする。後継者難による廃業が多い地方の実情に配慮したとは評価するが、課税範囲の拡大など相続税の改革も確実に進めるべきだ。

 創業直後のベンチャー企業への投資を優遇する「エンジェル税制」では、出資額のうち最大1000万円を寄付金として所得控除できるようにする。エンジェル税制は10年前に導入したが、適用条件の厳しさもあって06年度の利用は12億円にとどまる。起業促進は最優先の課題であり使い勝手の良い制度にしてほしい。

 国際競争に遅れる懸念

 08年末からの公益法人改革に伴う税制では、第三者機関が認めた「公益社団・財団法人」について、いまは課税対象の33事業でも一部に非課税扱いを認める。それ以外の「一般社団・財団法人」には収益事業などに現行22%でなく30%(800万円以上)の税率をかける。公益法人を天下り先とする省庁の動きを止めるのが改革の狙いだ。公益性の認定は厳格にすべきだ。

 日本の税制が国際標準に遅れていることを示す例が、今回決まった外航海運業界に対する保有船舶の重量(トン数)に応じた課税だ。海運は活況が続くが、日本だけが企業の利益課税で税負担が重く、トン数課税の外国勢に比べ不利だった。国際競争に直面する外航海運だけでなく、出遅れは日本全体に当てはまる。

 今度の衆院選では消費税はもちろん、所得・法人課税も含めた抜本改革の姿を与野党が明らかにする必要がある。福田康夫首相も党税調に任せきりにせず自ら指導力を発揮して、次の税制改正に向けて広範な抜本改革への道を切り開いてほしい。

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