政府税調答申に対する社説-中国新聞(11月26日朝刊)
政府税調答申 やはり「痛み」は庶民に
減税廃止という形で個人と企業に負担増を求めた、と受けとめていいものか。政府税制調査会がきのう小泉純一郎首相に提出した二〇〇六年度税制改正の答申である。所得税と個人住民税の一定割合を軽減する定率減税を廃止するとともに、企業の法人税負担を軽減する情報技術(IT)投資促進税制なども打ち切る内容。大企業の利益がバブル期を上回る中、法人税率の見直しが選択肢にないのは不公平感が募る。
定率減税は一九九九年、当時の小渕内閣が「恒久的減税」と称する景気浮揚策として導入した。セットで実施されたのが高額所得者減税(所得税最高税率の引き下げ)と企業減税(法人税率引き下げ)である。
定率減税は昨年度の税制改正で所得税が来年一月、個人住民税は同六月徴収分から半減することが決まっている。残りの半分をどうするかだった。全廃を決めたのは政府税調が「景気が回復し実施してもいい状況になっている」と判断したからだ。
全廃すると国と地方の税収は三・三兆円程度増える。その結果、サラリーマンの税負担は年間で最大二十九万円増。夫婦と子ども二人の家庭(年収七百万円)では八万二千円増になるから影響は大きい。
忘れてならないのは、与党が昨年末にまとめた税制改正大綱が、所得税の定率減税廃止による増収分を年金改革に伴う基礎年金の国庫負担の引き上げ財源に充てるとしている点だ。現行の三分の一から二分の一に引き上げるのは、働き盛り世代の負担軽減が目的とされてきた。その財源を、子育て真っ最中の家庭に増税という形で引き出すのは大きな矛盾といえないだろうか。
そのうえ、「景気の回復」は一部の大企業が中心である。その法人税ではIT投資促進税制(減収額五千百億円)と研究開発費の優遇上乗せ分(同約千六百億円)が本年度末で期限が切れる。存続を希望する声も強いが、こちらの優遇措置を続ける根拠は見当たらない。打ち切りは当たり前である。
問題になるのが定率減税とセットで導入された法人税率引き下げに伴う企業減税である。政府税調は法人税率は当面現状維持が妥当とする。確かに、財政の事情が許す限り、税率を下げることが経済全体の活性化につながるとの見方もある。
法人税の基本税率は現在30%。消費税が導入された一九八九年と九九年の二度にわたり引き下げられた。「国際競争力の維持」などが理由とされ、法人税収は八九年の四割まで落ち込んでいる。経済界は、地方税と合わせると欧米主要国と同水準で増税など論外という。しかし租税特別措置などで、実際の税負担は軽減されているのは間違いない。
企業が高利益を上げても、サラリーマンの給与などで家計にはなかなか還元されそうにない。こうした状況で企業の優遇策は納得しがたい。
政府は行財政改革と歳出削減の徹底で結果を出すことが求められる。それなくして国民に負担増ばかり強いるのは釈然としない。国民も監視する必要がある。
税制論議は今後、事実上決定する与党税制調査会に移る。法人課税も、厳しく見直す視点がいる。