《コラム》開業届を提出すれば事業所得?-損益通算による税金還付の誤解

column  皆さんこんにちは。税理士の米津晋次です。  昨日(2015年2月17日)の新聞各社の朝刊に、会社員ら約20人に所得税の不正還付を指南したとして、名古屋国税局が名古屋市中区の会社役員を所得税法違反(脱税)と税理士法違反の疑いで名古屋地検に告発したことが報道されました。  架空取引による赤字申告や税理士資格がないのに所得税確定申告書を作成したという明らかな不正は問題外ですが、それを別にしても各社の報道には誤解をされるような説明がされているのが気になります。  何が気になるかというと、会社員が副業で赤字になれば損益通算で税金の還付が受けられる、と新聞誌上で説明していることです。  単純にこのとおり理解してしまうと、実際に副業が赤字になった場合には所得税の還付を受けられるものだと勘違いしてしまいます。インターネット上でも同じような情報が多く掲載されています。  ところが多くの場合、会社員の副業は給与所得との損益通算は認められず、所得税の還付は受けられないのです。ちょうど今週から所得税の確定申告が始まっている時期でもありますので、このことを次から説明していきたいと思います。 shinkoku

【損益通算が認められるのは事業所得、不動産所得】

 所得税では、所得を10種類の区分に分けます。事業所得、不動産所得、給与所得、雑所得などです。  これら10種類の所得区分のうち会社員の副業に関係するもので給与所得と赤字の損益通算ができるのは、事業所得、不動産所得です。  事業所得は個人事業(商売)による所得で、不動産所得は不動産賃貸による所得です。事業所得や不動産所得で赤字になれば、給与所得との損益通算(赤字の相殺)ができ、確定申告すれば結果として所得税の還付が受けられるわけです。  一方、雑所得に区分されると、給与所得との損益通算が認められず所得税の還付は受けられないのです。  今回の新聞報道では、紙面の都合もあるのでしょう。このことが説明されていません。どのような所得区分になっても給与所得との損益通算ができるように読み取れてしまいます。

【税務署に開業届を提出すれば事業所得?】

 私の税理士事務所に相談にこられる方や知り合いの方は、ここまでは理解されている方が多いようです。しかし問題は、会社員の副業がそう簡単に事業所得として認められないことが理解されていないことです。  典型的な例では、「税務署に個人事業開業届を提出すれば事業所得になる」と思われていることです。これは間違いです。今まで多くの方が同じように勘違いされています。インターネット上でもこのように掲載されているサイトが複数あります。  税務署は届出書が提出されれば基本的に受け付けます。言い方を換えれば届出書を受理しただけにすぎないのです。「個人事業の開業届が税務署が受け付けられたから事業所得として認められた」ことにはならないのです。  会社員の副業は原則的には雑所得とされます。したがって会社員の副業は損益通算が認められないことになります。 zeimusyo

【事業所得として認められるには】

 会社員の副業が、雑所得でなく事業所得として認めてもらうためには、簡単にいえば常識的に商売しているといえる規模があることが必要なのです。  少し難しい表現で説明すると、「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」が事業所得なのです。継続的にその事業を行っていて、利益を上げるために頑張っていて、その事業を行っていると客観的に認められている場合に「事業所得」となるわけです。  それでは、どのくらいの規模があれば事業所得と認められるのか。たとえば、売上高がいくら以上とかいう明確な規定は残念ながら所得税法では規定がありません。総合的に判断されるのです。  私見ですが、副業での売上高が給与収入以上あることがひとつの目安としてあげられるのではないでしょうか。できれば生活費をまかなえる程度の利益があれば申し分ありません。  売上高がたとえそこまでいかなくても、副業用の名刺を作っているか、屋号はあるか、広告やチラシ、看板、ホームページなどによる宣伝活動をしているか、事業用の電話番号を持っているか、コピー機等があるか、スタッフを雇っているか、住居とは別に事務所などのスペースを確保しているかなどの判断材料もあるでしょう。これらの多くは、商売をやっていれば当然にやっていることだからです。

【まとめ】

 繰り返しになりますが、会社員の副業は原則的には事業所得としては認められません。雑所得に区分される可能性が高いです。したがって、その副業の赤字は給与所得との損益通算はできず、所得税の還付は受けられないと理解してください。  なお、雑所得とされてしまうと、青色申告の特典も受けられなくなってしまいます。こちらも「青色申告承認申請書」を税務署に提出したからといってもダメです。青色申告特別控除(最大65万円)や青色専従者給与も認められませんので、お気をつけください。 →税理士 米津 ミニコラム一覧へ →よねづ税理士事務所トップページへ戻る