《コラム》生前贈与の思わぬ落とし穴

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生前贈与の思わぬ落とし穴

【相続税対策でもっとも有効な生前贈与】

来年(平成27年)からの相続税増税まで3ヶ月となりました。 今までお金持ちしか関係なかった相続税ですが、来年からは普通の人にも関係するようになってきます。 相続税対策でもっとも有効なのは、できるだけ早くから、生前贈与を使うことだと私は言い続けています。 「生前贈与」とは、贈与税年間110万円までは無税で、それを超えても超えた金額が200万円までの部分の贈与税率が10%と低いことを利用し、亡くなる前に財産を移転するものです。 それも早くから始めて長期間続ければ、多額の財産の移転が可能になります。   たとえば、贈与税無税の年間100万円を子供や孫5人へ贈与すれば、1年で500万円。10年なら5000万円の移転がそれも無税で可能になるのです。

【税制でも生前贈与を後押し】

国も財産の世代間移転を早くさせようと優遇策を設けています。 知られたところでは、「教育資金贈与」。 教育資金であれば、最大1500万円まで非課税で子供や孫への贈与が可能になりました。 未成年者を対象とした「子供NISA(少額投資非課税制度)」も2016年に始まる見込みです。  

【銀行などが新商品で取込を狙う】

銀行などは、このような優遇税制を利用しやすくした商品を新たに作り、相続対策マネーの取込を競っています。 教育資金贈与制度を利用した商品として、「教育資金贈与信託」や「教育資金贈与専用預金」があります。 また、通常の生前贈与でも、契約書を作成したりする手続きが不要になる「暦年贈与信託」を始めた銀行もあります。 生命保険会社も、生前贈与と終身保険や個人年金保険を組み合わせた提案を行っています。  

【生前贈与の注意点】

このように相続対策として有効でやりやすくなった生前贈与ですが、気をつけないといけない点があります。 まず、いわゆる「名義預金」と言われているものを避けることです。 「名義預金」とは、親が子供に黙って子供名義の預金口座を開設してそこに金を振り込み、通帳の保管を親がしているようなケースをいいます。 ひどい場合には、子供の口座に親の印鑑で届けている場合もあるようです。 贈与は、法律的にいえば民法により贈与する側ともらう側の両方が合意して初めて成立する契約行為です。 「名義預金」の場合、片方の子供が知らないならそもそも贈与にあたらないことになってしまいます。 たとえ子供が贈与されたことを知っていたとしても、印鑑や通帳を親が管理していて、子供が自由に出せない場合も贈与とはされません。 なぜなら、贈与を受けたからにはその所有者である子供が自分の財産を自由にできるようになっていることが必要だからです。   そのほかにもあります。 これは税務署側の勝手な解釈だと言いたいのですが、前もって「1000万円を年100万円ずつ10年に分けて贈与する」という将来の贈与計画を最初に決める行為も問題になります。 1年100万円の贈与だから問題なさそうですが、税務署からは最初の年に一括で1000万円贈与したのと実質的に同じだと判断されることもあります。無茶な解釈ですね。 これを避けるには、年ごとに贈与契約書を作成して贈与額を決定し、できれば贈与する日や贈与額も毎年少しずつ変えるような対策も必要になります。 贈与する親の預金口座から贈与を受ける子供や孫の預金口座に直接振り込んで、贈与の事実を記録に残すことも大切でしょう。 当然、贈与額が年間110万円を超えた場合には、贈与税の申告を行っておくことも重要です。  

【気をつけたい生前贈与の落とし穴】

上記に気をつければ生前贈与はバッチリか、というと、じつはそうではありません。思わぬ落とし穴があるのです。 確かにこれで生前贈与自体はうまくいって相続税も節税できるのですが、逆に相続が発生した際の遺産分割で生前贈与が問題になるケースがあります。 その原因は、公平性の点です。 具体的な例をあげれば、長男がほかの子供より生前贈与額が多かった場合です。ほかの子供から見れば、面白くありません。遺産分割でその分を考慮してほしいと思うのは自然です。 子供同士は公平な生前贈与でも、長男の孫だけ生前贈与が多いといった場合も問題になります。 さらに生前贈与がほかの子供が知らないうちにされていたとしたらもっと感情的になるでしょう。   このように、子供たちのために思ってやったことが、逆に争いの原因になっては残念です。 これを防ぐためには、次の2点が重要でしょう。 ・生前贈与はできるかぎり公平にすること ・生前贈与の事実をオープンにすること 最後に一言。 ご家族みなさんが感謝してもらえるような生前贈与をしましょう。 家族   →よねづ税理士事務所トップページへ戻る