《コラム》支払調書の発行義務

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こんにちは。名古屋の税理士 米津晋次です。

所得税の確定申告真っ最中です。

この時期によくお客様へ個人の取引業者から依頼があるのが「確定申告で使用するので支払調書を発行してほしい」というものです。

依頼を受けた多くの企業は、義務かと思って発行されています。
多くの企業も発行していますから。

ここに大きな誤解、悪しき慣習があります。

(1)支払調書とは?

「支払調書」とは、企業が税務署に提出しなければならない書類のうちのひとつです。

「支払調書」にはいろいろな種類がありますが、取引先が発行してほしいと依頼してくるのは、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」というものです。

支払調書

これは、企業が個人に支払ったもののうち、原稿料やデザイン料、講演料など規定されている取引に該当する場合には、一定の源泉所得税をひく義務があり、その相手に対する1年間の支払額合計と控除した源泉所得税の合計を記載するものです。

われわれ税理士への支払もこの取引に該当します。

会社が相手のときには、源泉所得税を控除する義務も、支払調書を作成して提出する義務もありません。

どうしてこのような制度があるかというと、おそらく「個人は確定申告をしない人もいるだろうから、あらかじめ税金を引くようにしておこう」ということでしょう。

税理士などの士業が対象になっているのもその理由だとすると、はずかしいことです。

(2)支払調書をほしい人

この「支払調書」の発行・提出義務がある業種に該当する個人事業の方は、通常確定申告の義務があります。

確定申告では、1年間の売上や必要経費の集計をして、それをもとに税金の計算をします。

今のように企業が支払調書を発行するようになったのは、企業が1年間の集計をしているのだから、それをもらえば確定申告のために自分で集計をする必要がなくて便利、ということで支払調書の発行を取引先企業に発行し、その企業も親切に発行してあげたということではないかとと推測されます。

(3)支払調書発行についての勘違い

個人の方は取引先企業から支払調書は当然発行されるものだと思い、もし発行されないと、当然のように発行を依頼しているのが現状です。

上記で説明したように、企業は税務署には支払調書を作成・提出する義務はあっても、取引先の個人へ支払調書を発行する義務はないのです。

あくまで、サービスとして発行してきたのです。

ほかの企業も発行しているから、しかたがなく・・・・・

 

(4)支払調書を発行するとこんなリスクも・・・

支払調書に記載する数字は、人間がやることですから間違うこともあります。

もし、誤って本来より少ない数字を記載した支払調書を発行し、受け取った個人の取引先の方がその支払調書の数字をそのまま使って確定申告をしました。
後日、税務署から金額不足の指摘があった場合、その個人の方は責任を押し付けてくるかもしません。

「支払調書が間違っていたから余分な延滞税などを支払うこととなった」と。

親切で行った行為によって、責任をとらされるなんてたまりません。

支払調書を発行する際には、発行義務と責任について充分お知らせする必要があります。

(5)支払調書を発行しない有名企業がでてきました

最近、支払調書を発行しない企業がでてきました。

まずはみなさんがご存知のアマゾンです。書籍通販で有名ですね。

アマソンは今回から、アフィリエイターに対する支払調書の発行をやめました。
日本最大級のクラウドソーシング「ランサーズ」では、サイトに支払調書の発行をしない旨を掲載しています。

 

(6)支払調書を発行するのはやめませんか?

このようなリスクがあっても何の得にならない支払調書発行の慣習は、そろそろやめませんか?

個人側も支払調書の発行を取引先へ依頼するのをやめませんか?

取引先個人に方が自分で集計して確定申告すべきなのです。

私も原稿料や講演料などのの支払調書の送付をいただきますので、受け取る側の便利さを充分に理解しています。

そのうえでの提案です。