令和6年度与党税制改正大綱が決定

2023年12月17日
 
 自民党と公明党は2023年(令和5年)12月14日、令和6年度与党税制改正大綱を決定しました。




令和6年度税制改正大綱の概要


企業向け主な改正内容


 企業向けではまず、賃上げ促進税制について新たに中堅企業の枠を設けて利用しやすい仕組みとするとともに、中小企業向けに繰越控除制度を設けるとしています。
 また、交際費等の損金不算入制度における接待飲食費は1人当たり1万円以下に範囲を拡大。
 法人事業税の外形標準課税の対象では、一定の場合に「資本金+資本剰余金の合計額」とする基準が加えられるとしています。

個人向け主な改正内容


 個人向けでは、給与所得者の定額減税について、令和6年6月以降に実施するとしています。
 また、相続税・贈与税の納税猶予制度の特例承継計画の提出期限を2年延長します。

消費税関係の主な改正内容


 インボイス制度については、自販機特例の帳簿等への住所等の記載不要や簡易課税制度の経理処理方法の明確化を行うとしています。


主な改正内容:企業向け


中小向け賃上げ促進税制関係


 「賃上げ促進税制」については、次の見直しを行った上、適用期限を3年延長する。

<全法人向けの措置の見直し>
・原則の税額控除率を10%(現行:15%)に引き下げる。

・税額控除率の上乗せ措置を(1)(2)(3)の場合の区分に応じそれぞれ次のとおりとする。
(1)継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上の場合に、税額控除率に5%(増加割合が5%以上の場合は10%、増加割合が7%以上の場合は15%)を加算する
(2)教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上の場合に、税額控除率に5%を加算する
(3)プラチナくるみん認定又はプラチナえるぼし認定を受けている場合 税額控除率に5%を加算する
・本措置の適用を受けるために「給与等の支給額の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項」を公表しなければならない者に、常時使用する従業員の数が2,000人を超えるものを加える。
・本措置の適用を受けるために公表すべき「給与等の支給額の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項」における取引先に消費税の免税事業者が含まれることを明確化する。

<中小企業向けの措置の見直し>
・控除限度超過額は5年間の繰越しができることとする。なお、この繰越税額控除制度は、繰越税額控除をする事業年度において雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超える場合に限り、適用できることとする。
・教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置について、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が5%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合に、税額控除率に10%を加算する措置とする。
・当期がプラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けている事業年度又はくるみん認定若しくはえるぼし認定(2段階目以上)を受けた事業年度である場合に、税額控除率に5%を加算する措置を加える。

交際費等の損金不算入制度に係る見直し


 交際費等の損金不算入制度については、次の見直しをする。
・損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準を1人当たり1万円以下(現行:5,000円以下)に引き上げる。
・接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を3年延長する。

法人事業税の外形標準課税の対象を拡大


 法人事業税の外形標準課税の対象法人について、現行基準である資本金又は出資金(「資本金」)1億円超)を維持する。

 ただし、当分の間、当該事業年度の前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金(これに類するものを含む。「資本剰余金」)の合計額(「資本金と資本剰余金の合計額」)が10億円を超えるものは、外形標準課税の対象とする。

 また、施行日以後最初に開始する事業年度については、上記にかかわらず、公布日を含む事業年度の前事業年度(公布日の前日に資本金が1億円以下となっていた場合には、公布日以後最初に終了する事業年度)に外形標準課税の対象であった法人であって、当該施行日以後最初に開始する事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるものは、外形標準課税の対象とする。

その他の主な改正内容


・「暗号資産」について、法人が有する市場暗号資産に該当する暗号資産で譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産の期末における評価額は、原価法と時価法のいずれかの評価方法のうちその法人が選定した評価方法により計算した金額とする。

・「戦略分野国内生産促進税制」を創設する。産業競争力強化法の事業適応計画の認定事業適応事業者であるものが、その事業適応計画に記載された産業競争力基盤強化商品の生産をするための設備の新設又は増設をする場合において、その新設又は増設に係る機械その他の減価償却資産の取得等をして事業の用に供したときは、一定の税額控除ができることとする。

・「研究開発税制」について、対象となる試験研究費の額から、内国法人の国外事業所等を通じて行う事業に係る試験研究費の額を除外する。

・「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」について、対象法人からe-Taxにより法人税の確定申告書等に記載すべきものとされる事項を提供しなければならない法人のうち常時使用する従業員の数が300人を超えるものを除外した上、適用期限を2年延長する。


主な改正内容:個人向け


「定額による所得税・個人住民税の特別控除」を実施


 令和6年分の所得税・個人住民税について、居住者の所得税額から、次の特別控除の額を控除する。ただし、その者の令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である場合に限る。

<定額減税の特別控除の額>
・所得税:(1)、(2)の合計額とする(その者の所得税額を限度とする)。
 (1) 本人 3万円
 (2) 同一生計配偶者又は扶養親族(居住者に該当する者に限る) 1人につき3万円
・個人住民税:(1)、(2)の合計額とする(その者の所得割の額を限度とする)。
 (1) 本人 1万円
 (2) 控除対象配偶者又は扶養親族(国外居住者を除く) 1人につき1万円

特例承継計画の提出期限を2年延長


 「非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度」の特例承継計画及び「個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度」の個人事業承継計画の提出期限をそれぞれ2年延長する。

扶養控除等の見直しは令和7年度改正で結論


 16歳から18歳までの「扶養控除」についての見直しは、令和7年度税制改正において、令和6年10月からの児童手当の支給期間の延長が満年度化した後の令和8年分以降の所得税と令和9年度分以降の個人住民税の適用について結論を得る。

 「ひとり親控除」の対象となるひとり親の所得要件・控除額の見直しについて扶養控除の見直しと合わせて結論を得る。

 令和7年度税制改正において「子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充」も検討し、結論を得る。

その他の主な改正内容


・「住宅ローン控除」について、個人で、年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者が、認定住宅等の新築等をして令和6年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額を、認定住宅:5,000万円、ZEH水準省エネ住宅:4,500万円、省エネ基準適合住宅:4,000万円として特例の適用ができることとする。

・「特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例」、「特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等」の適用期限をそれぞれ2年延長する。

・「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等」について、一定の見直しの上、適用期限を2年延長する。

・「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」について、非課税限度額の上乗せ措置の適用対象となるエネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅用の家屋の要件を見直しの上、適用期限を3年延長する。

・「特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例」の適用期限を3年延長する。

主な改正内容:消費税


インボイス自動販売機特例の住所等の記載を不要に


 一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる自動販売機及び自動サービス機による課税仕入れ並びに使用の際に証票が回収される課税仕入れ(3万円未満のものに限る)については、帳簿への住所等の記載を不要とする。
 なお、令和5年10月1日以後に行われる上記の課税仕入れに係る帳簿への住所等の記載については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする。


【投稿者:税理士 米津晋次
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